ニホンジカ(Cervus nippon)の採食下にある旧薪炭林の樹木群集の構造について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ニホンジカの採食下にある旧薪炭林を対象に、その森林構造や林分構成種の幹集団構造の現況を把握し、今後の林分の推移について考察するため、兵庫県内のシカの生息密度で異なる4地域において植生構造の調査を行った。シカの採食下にある林分とシカの採食下にない林分で森林構造を比較したところ、前者の林分では、後者に比べて、小さな樹高階の幹数が顕著に少なかった。林分構成種を樹高階別本数分布のパターンから2タイプに区分すると、大きな樹高階に幹数のモードをもち、一山型もしくは一様型の樹高分布パターンを示すI型樹種と小さな樹高階に幹数のモードがあるII型樹種に区分された。シカの採食下にある林分において、I型樹種にシカの採食の影響は認められなかったが、II型樹種では樹高階別本数分布のパターンが本来のL字型から一山型へ変化していることが認められた。次に、林分構成種を二次遷移後における幹集団の存続性に応じて、幹集団衰退型と幹集団維持型に区分した。調査林分に出現した幹集団維持型の高木種の大半はII型樹種であり、シカの採食下にある林分において稚幼樹がほとんど確認されなかった。このことは、このタイプの樹種の林分への侵入と林分内における更新がシカの採食によって阻害されていることを示唆していた。伐採されなくなった二次林では、遷移後期種による林分の更新が進むことを考えると、遷移後期種と思われるII型で幹集団維持型の高木種・亜高木種の侵入・定着がシカの採食によって阻害されることは、高木層・亜高木層の幹集団の更新が進まないことを意味する。したがって、シカの採食圧が高い状況が長期的に続くと旧薪炭林における高木層・亜高木層は徐々に衰退する恐れがある。一方、I型で幹集団維持型の樹種を主体とした林分の更新が生じる可能性も考えられる。その場合は通常の二次遷移と異なる林分へ偏向遷移する可能性がある。
- 2006-06-25
著者
-
藤木 大介
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
藤木 大介
兵庫県立大学自然・環境科学研究所:兵庫県立人と自然の博物館自然環境マネジメント研究部
-
坂田 宏志
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
鈴木 牧
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
後藤 成子
関西野生動物問題研究会
-
横山 真弓
兵庫県立人と自然の博物館
-
横山 真弓
兵庫県立大学兵庫県森林動物研究センター
-
坂田 宏志
兵庫県博
-
横山 真弓
兵庫県立大学自然・環境科学研究所
-
坂田 宏志
兵庫県森林動物研究センター
-
坂田 宏志
兵庫県立人と自然の博物館生態研究部
-
坂田 宏志
兵庫県立大学
-
坂田 宏志
兵庫県立人と自然の博物館 自然・環境マネジメント研究部
-
坂田 宏志
兵庫県大 自然・環境科研
-
横山 真弓
兵庫県立大学
-
坂田 宏志
兵庫県立大学:森林動物研究センター
-
藤木 大介
兵庫県立大学大学院:兵庫県森林動物研究センター
関連論文
- 宮崎県東諸県郡綾町川中の照葉原生林におけるニホンジカの採食の影響
- シカの強度影響下における広葉樹二次林の更新および生態系機能修復に関する研究 : 千葉演習林第12期試験研究計画に基づく大規模野外実験の設計及び初期状態
- 大阪府および兵庫県の2地域における野生アライグマと犬のレプトスピラ抗体保有状況調査 (日本小動物獣医学会誌)
- シカの強度影響下における広葉樹二次林の土壌動物相
- ニホンジカ(Cervus nippon)の採食下にある旧薪炭林の樹木群集の構造について
- ニホンジカの強度採食下に発達するイワヒメワラビ群落の生態的特性とその緑化への応用
- ニホンジカの個体数管理にむけた密度指標(区画法, 糞塊密度および目撃効率)の評価
- 宮崎県東諸県郡綾町川中の照葉原生林におけるニホンジカの採食の影響
- 大阪府および兵庫県の2地域における野生アライグマと犬のレプトスピラ抗体保有状況調査
- ニホンジカ象牙質における日周期成長線(解剖学)
- Sry遺伝子のPCR増幅によるニホンジカ(Cervus nippon)死体残留組織からの性判別法
- E208 戦うか?逃げるか? : アリの攻撃行動を制御するメカニズム(動物行動学 行動生態学)
- 兵庫県におけるペトリネットを用いたニホンジカの個体群動態予測モデルの構築
- 骨格成長を基準とするエゾシカ(Cervus nippon yesoensis Heude,1884)の胎子の成長評価と胎齢推定
- 目撃効率からみたイノシシの生息状況と積雪, 植生, ニホンジカ, 狩猟, 農業被害との関係
- イヌによる害獣追い払い活動がニホンザルの集落出没等に与える影響(日本家畜管理学会・応用動物行動学会2008年度春季合同研究発表会)
- 兵庫県におけるツキノワグマの保護管理計画及びモニタリングの現状と課題
- ツキノワグマはなぜ人里へ出没するのか? (特集 越境する動物たち--いま自然界に何が起こっているのか? 人間社会への/人間社会によるインパクトとは?)
- 特集「クマ類の特定鳥獣保護管理計画の実施状況と課題」にあたって
- 兵庫県におけるイノシシの個体数と狩猟の管理
- ニホンジカ個体群の保全管理の現状と課題
- 北海道阿寒国立公園におけるエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の冬期死亡
- C111 クロヤマアリ体表および足跡炭化水素中のオレフィンの組成比が情報として機能してる。(動物行動学・行動生態学)
- E201 アリの足跡物質とその生態的意義(生理活性物質)
- H212 アブラムシのアリ利用戦略において甘露成分が果たす役割(生態学)
- H211 甘露から見たアブラムシの生存戦略 : アリを利用するか否か!?それが問題だ(生態学)
- F312 社会性昆虫の協同作業を制御するメカニズムについて : アリのアブラムシ利用戦略から(生態学 行動学)
- P123 アブラムシとアリとクリの花 : 時空間分布パターンから見た多種間作用(ポスター発表)
- P209 アブラムシとアリの相互作用系 : 多種間に働く作用の密度依存性と間接効果(ポスター発表)
- J208 随伴アブラムシの個体数と,アリの採餌活動(行動学)
- D112 アブラムシに対するアリの認識法、随伴と捕食はどのように決まるか?(社会性昆虫)
- A406 アブラムシに対するアリの攻撃(種内・種間関係)
- 芦生上谷流域の植物多様性と群集構造--トランセクトネットワークによる植物群集と希少植物の検出 (特集 ニホンジカの森林生態系へのインパクト--芦生研究林)
- 鳥獣害から果樹園を護る(50)ヌートリア--その生態、人との関わり、被害対策
- 兵庫県におけるヌートリアの農業被害と対策の現状
- 兵庫県におけるシカ保護管理計画の現状と今後の展望
- 野生動物の保全と管理に向けた地理情報システムの活用(森林分野におけるGIS利用の展開)
- 社会性昆虫の集団の組織化と情報処理 (動物の社会行動) -- (無脊椎動物の社会行動)
- 人間の影響下での野生動物の生息状況を予測する (特集2 地理情報システム:GIS--生態系保全への新しいアプローチ)
- 竹筒トラップをもちいた管住性ハチ類の調査による生態影響評価手法の開発 (環境影響に関する調査研究)
- アブラムシの好蟻性を決定する要因 : アリによる捕食と蜜源間のアリを巡る競争
- F209 アブラムシ2種と花外蜜腺、アリの作用をめぐる仁義なき戦い(生態学)
- 日本におけるクマ類の個体群管理の現状と課題
- 大規模防鹿柵を用いた森林生態系保全の取り組み : 京大芦生研究林の事例(野生生物保護管理の最前線 拡大するニホンジカ問題と保護管理の行方)
- 兵庫県におけるニホンジカの個体数管理計画と捕獲技術の開発(野生生物保護管理の最前線 拡大するニホンジカ問題と保護管理の行方)
- 京都大学芦生研究林においてニホンジカ(Cervus nippon)が森林生態系に及ぼしている影響の研究--その成果と課題について (特集 ニホンジカの森林生態系へのインパクト--芦生研究林)
- 兵庫県氷ノ山山系におけるニホンジカCervus nipponの動向と植生の状況
- 兵庫県におけるツキノワグマの保全管理 (特集 クマ類の出没対策と保護管理)
- 害獣対策犬の活用状況に関するアンケート調査
- 景観構造を考慮したニホンジカによる水稲被害発生機構の解明とリスクマップの作成
- 兵庫県森林動物研究センターがオープンしました(自治体の最前線から)
- エゾシカ低密度生息域の天然生林における剥皮発生リスク要因--シカの生息地利用特性と樹木個体の特性に基づく分析
- 特集 野生動物保護管理の現状と未来--鳥獣保護法改正10年の総括
- 「日本版野生動物保護管理学」創りをめざして (特集 女性研究者が語る これからの生物学と生物学者) -- (女性研究者23人からのメッセージ)
- 鳥獣害から果樹園を護る(6)ニホンジカから果樹園を護る基礎知識
- 景観構造を考慮したニホンジカによる水稲被害発生機構の解明とリスクマップの作成
- 害獣対策犬の活用状況に関するアンケート調査
- 兵庫県におけるツキノワグマの保全管理(野生生物保護管理の最前線 クマ類の出没対策と保護管理)
- Management approach using simple indices of deer density and status of understory vegetation for conserving deciduous hardwood forests on a regional scale
- Assessing decline in physical structure of deciduous hardwood forest stands under sika deer grazing using shrub-layer vegetation cover
- 日本の野生動物保護管理システムの再構築を目指して(テーマセッション,第17回野生生物保護学会北海道大会報告)
- 外来生物アライグマの生育実態と今後の対策 (特集 害獣による被害とその対策)
- 外来生物アライグマの生息奥態と今後の対策 (特集 害獣による被害とその対策)
- 外来生物アライグマの生息実態と今後の対策 (特集 害獣による被害とその対策)
- 都市に浸入する野生動物に対応するための体制づくりを考える(テーマセッション,第17回野生生物保護学会北海道大会報告)
- 新ディア・ウオーズ(19)シカ対策が問う社会の対応能力 兵庫県森林動物研究センターの取り組み
- 安全と高品質をめざした兵庫県のシカ肉活用の取り組み (特集 ニホンジカの食資源化における衛生の現状と将来展望)
- 緒言 : 経緯と背景 (特集 ニホンジカの食資源化における衛生の現状と将来展望)
- ニホンジカのプリオン病(CWD)サーベイランス (特集 ニホンジカの食資源化における衛生の現状と将来展望)
- 天然シカ肉加工品の物性および嗜好性に及ぼす多穀麹添加の影響
- イノシシ管理の現状と最近の研究成果
- 兵庫県但馬地方のコナラ林とスギ人工林におけるニホンジカの生息密度勾配に伴う植物種数の変化パタン
- 餌付け罠の捕獲効率向上を目的とした事業の評価
- ニホンジカ管理の現場に求められる食資源化の現状と将来展望
- 「野生生物と社会」の岐路にどう立ち向かうか?(テーマセッション,第18回野生生物保護学会宇都宮大会報告)