オオベソオウムガイの飼育下における運動, 摂餌, 交接及び産卵行動に関する観察
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概要
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1976年6月20日ニューカレドニア・ヌメアで採集されたオオベソオウムガイ6個体が, よみうりランド海水水族館に7月22日輸送され飼育・展示された。これらの標本につきその遊泳行動, 摂餌, 交接等の観察を行い, また飼育中産出された卵嚢やオオベソオウムガイの外部形態の性的相異についても観察し, 次のような結果を得た。(1) オオベソオウムガイの行動は緩慢で, 日中は地物に付着して静止していることが多い。前後進, 体の向きをかえることはすべて漏斗の方向をかえることによって行うが, 屡々振子運動を行う。(2) 通常最も腹側にある1, 2対の触手を下方に懸垂させていて, 眼の周囲にある2対の短い触手は水平方向に保っている。(3) オオベソオウムガイは生き餌には反応せず, 冷凍エビ, アジの切身をピンセットによって与えられるものを容易に摂取するし, また, 海底に落ちている餌を触手を用いて拾う。(4) 交接は雌雄触手を絡ませ合い, 浅いL字型をなす。多量の粘液を分泌させる。(5) 雄の交接器はユリの球根を思わせるような球型の器官で, これを雌の囲口部に密着させる。交尾後雌の囲口部に糸状の小器官が粘着しているのが見られるが, これが雄から渡された精子嚢様物であろうと思われる。(6) 雌は囲口部を取り囲む内方の触手が発達し, とくに腹側のそれは人間の手様の肉葉に担われている。雄はこの触手の発達が悪い。(7) 卵嚢は上記の内方触手を用いて地物に固着される。正常卵嚢は亜卵形ないし拇指状で, 外皮は堅く革質状である。飼養中に15の産卵が行われたが, このうち正常と認められるものは僅か4こであったが, いずれも発生しなかった。
- 1977-05-15
著者
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