人工降雨による土壌構造の変化について
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概要
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本研究では自然降雨また人為的散水潅漑における雨滴落下という外部的因子が,土壌構造に大きな影響を及ぼしているとの仮定のもとに,人工降雨装置を使った室内実験を行い雨滴落下による土壌構造の変化を検討した.降雨因子の条件設定は,散水時間5分15分,30分,45分,60分の5段階,散水強度(mm/hr)は60,160の2段階として,マサ土と関東ロームの2試料を対象として実容積測定,透水試験,pF試験などの一連の実験を実施した.その結果,土壌構造の変化についていくつかの知見が得られた.(1)土壌三相に関しては,散水時間経過に伴い土壌空気率は減少し,水分率は増大した.これは,土壌間隙に水分が侵入して気相部分が減少したためであるが,いずれも,地表面流出の発生を契機にその変化率は緩やかになり,一定量以上の土壌空気率の減少,水分率の増大は認められなかった.(2)散水時間経過に伴い土壌の固相率は増加傾向を示した.すなわち,降雨により破壊された土粒子が,土壌水の降下浸透中に土壌間隙を閉塞し,単位体積当りの固相質量を増加させたものと思われる.なお,この土壌の固相率の増加は散水強度の大きいR=160の方がR=60より顕著であり,これらのことは,散水時間経過に伴い土壌の乾燥密度が増大したことからも同様の結果が得られた.(3)土壌の透水係数も散水時間経過に伴い減少を示した.また,同時間の散水を行った場合も散水強度の大きな条件の方が透水係数の減少が著しかった.これは,散水された水の動きによる団粒(4.76mm〜2.0mm程度の土塊)の崩壊と移動が激しく,間隙への土粒子充填が著しく進行したためである.なお,実際の自然地では散水時間経過に土壌表面にシール(土壌皮膜)が形成され,さらに土壌の透水性の減少することが明らかにされている.この間隙への土粒子充填のメカニズムは,散水時間経過により土壌の間隙率と粗間隙率の減少を示唆することからも確認できた.(4)pF 1.5〜2.0(圃場容水量)時の土壌の保水性は散水時間経過に伴い低下を示したが,逆にpF2.2〜2.3にかけては,土壌の保水性は増加傾向にあった.しかしながら,植物生育に際して植物根の利用可能な重力水(pF 1.5〜2.0以下)の保水性に関して,散水時間の経過,散水強度の増大に伴って低下が著しいことに着目すると,雨滴落下は水分供給以外の面では,植物生育上好ましくない土壌構造を形成していると判断できる.こうした問題に対しては,雨滴落下による衝撃を緩和させるため裸地状態の期間を短くするためのマルチング等の対策をすることが必要と考えられる.(5)土壌の間隙の減少は土壌の透水性を不良にして,地表面流出を促進し土壌面侵食を引き起こす.また,土壌の通気性を悪化させて植物根の発達不良を助長し,植物生育の観点からも土壌保全の立場からも不適当である.こうした影響の蓄積による災害や被害の誘発を軽減するために,土壌改良剤の混入,侵食防止剤の散布,畑地では深耕などの土層改良をはじめとした対応策を,暫時導入する必要性が不可欠と思われる.
- 1992-03-25
著者
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