開放系高CO_2実験水田圃場における重窒素標識法による窒素の動態解析
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概要
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大気中のCO_2濃度が上昇し続けており,地球規模での気候の変動が引き起こされ食料生産や自然生態系に大規模な影響を及ぼすと危惧されている.大気CO_2増加が植物生育に及ぼす影響についてはチャンバーを用いた実験が1960年代から行われているが,チャンバー自体の影響(チャンバー効果)を無視できないため,チャンバー効果のない実際の開放系でCO_2濃度を高めるための実験方法FACE(Free-Air-CO_2-Enrichment,開放系高CO_2実験系)が開発された.本研究は,CO_2濃度を水稲生育期間中,外気よりも200ppmv増とした水田圃場で生態系にどのような変化が生じるかを明らかにすることを目的として岩手県雫石で実施されたRice FACE実験の一環として,土壌中の窒素動態に及ぼす影響を重窒素標識法を用いて解析した.水稲移植時に1株分の作土を含む小区画を枠で囲み,移植時あるいは水稲生育中3回,基肥以外に^<15>N標識硫安を枠内に均一に施用した.施肥直後または26-35日後に枠内の水稲と土壌(表層0-1cmおよび次表層1-13cm)を採取し,水稲吸収窒素,土壌微生物バイオマス窒素,土壌中アンモニア態窒素およびそれらの重窒素濃度を定量した.水稲生育初期には対照区(大気CO_2濃度)に比べてFACE区で水稲吸収窒素量および施肥由来中窒素量が高かった.水稲吸収窒素に占める施肥窒素由来の割合は水稲生育と共に増加し登熟期にはFACE区で58.06%,対照区で61.20%となった.微生物バイオマス窒素とアンモニア態窒素は生育期間を通して表層土壌で次表層より多かった.収穫期には高CO_2濃度が表層土壌のバイオマス窒素を対照区に比べ有意に増加させていた.一方,微生物バイオマス窒素とアンモニア態窒素の施肥由来回収率は,生育期間を通して表層より次表層で高かった.以上の結果から,高CO_2濃度が水田圃場の土壌窒素動態に時期及び位置を限定して影響を及ぼしていることが明らかになった.
- 千葉大学の論文
- 2002-03-29
著者
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