慢性腎不全患者における血清リポ蛋白,アポ蛋白代謝異常の検討 : 特に透析期の高中性脂肪血症,移植期の高コレステロール血症について
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概要
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慢性腎不全(CRF)3期(尿毒症(U)期24例,血液透析(HD)期27例,腎移植(Tx)期20例),腎機能正常者(C群)24例を対象に,中性脂肪(TG),総コレステロール(Tchol), VLDL,LDL,アポ蛋白AI,AII,B, CII,E,VLDLアポ亜分画を測定し,リボ蛋白,アポ蛋白代謝を検討した。すべてのCRF患者が高脂血症を呈するわけでないため,各例を高中性脂肪血症(HTG; TG≧170mg%),正常中性脂肪血症(NTG),高コレステロール血症(HC; Tchol≧230mg%),正常コレステロール血症(NC)の各群に分け,HD期の高中性脂肪血症をHD-HTG群,HD-NTG群間で,またTx期の高コレステロール血症をTx-HC群,Tx-NC群間で各病期にともなう背景因子を除外したうえで比較検討した。HD-HTG群(TG 300±167mg%)はHD-NTG群に比し有意のコレステロール(205±38mg%), LDL(665±198mg%)値の上昇をみ,粥状動脈硬化抑制の指数といわれるアポAI/B比の低下をみ,またアポCII,E値,VLDL/CII,VLDL/E比の上昇をみた。これらの結果はしかしC-HTG群,C-NTG群間でも同様に認められた。VLDL亜分画のアポCII/CIII比はHD-HTG群で有意に低下していたが,この比の低下はHD-NTG群にも同様に認められた。Tx-HC群(Tchol 286±32mg%)はTx-NC群に比し有意のTG (218±95mg%),VLDL(202±130mg%),アポB値の上昇,アポAI/B比の低下をみた。これらのうちアポB,AI/B比の異常はC-HC群にも同様にみられた。CRFのリボ蛋白,アポ蛋白代謝面にみられた異常のほとんどは,腎不全の有無にかかわらず高脂血症そのものに共通するものであった。反面HD-NTG群におけるすべてのアポ蛋白濃度の減少という結果などより,CRFそのものによるアポ蛋白代謝異常の存在も明らかであった。
- 北里大学の論文
- 1989-02-28
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