大量の鼠癩菌を感染させたICRマウスにみられる細胞性免疫不全とOK-432の免疫増強作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
マウスに鼠癩菌を感染させる場合,癩腫の500〜1000倍希釈乳剤の0.2mlを接種することが習慣として踏襲されてきた。ところが,その10〜100倍濃厚な乳剤をC3H/HeN,C57BL/6ならびにICRマウスの皮下に接種し,その後に成立する細胞性免疫の程度をマクロファージ遊走阻止試験で調べると,元来,鼠癩菌に対して高感受性を示すC3H/HeN系マウスでは細胞性免疫の成立程度は正常域にあったが,本菌に対して中等度感受性を示すC57BL/6系マウスではその免疫の成立が明らかに低下しており,本菌に対して抵抗性を示すICR系-その後,ddY系にあっても同様に-マウスでは,その成立が,いっそう顕著に,阻害されていることがわかった。なお,この際の免疫成立阻害は感染に関連した抗原だけでなく,感染とは無関係な蛋白抗原に対しても認められた。一方,体液性抗体の産生は,鼠癩菌の大量感染の結果,細胞性免疫の成立が阻害されたマウスの方が,逆に,高進していた。細胞性免疫の成立阻害と体液性抗体の産生高進は癩腫型患者の免疫能の特徴をよく示しているところから,抵抗性系のマウスに大量の鼠癩菌を感染させることが癩腫型患者のよきモデルとして使用できるのではないかと考えている。なお,抵抗性系マウスに大量の鼠癩菌を感染させた後,5日間,OK-432の0.5KEずつを接種することにより,細胞性免疫の成立阻害は,ほぼ完全に,防止された。かかる,免疫増強剤を癩患者の治療に応用する可能性についても言及された。
- 北里大学の論文
- 1977-10-31
著者
関連論文
- サルモネラ菌体表層抗原を認識するモノクローナル抗体
- 紫外線照射による流水への殺菌効果とその持続性についての研究
- コッホの postulates と川崎病のA群溶連菌感染症説 : I. Germ theory の変遷
- 感染症に対するリポソーム封入抗生剤の治療効果 : 2.マウスにおける肺炎球菌感染に対するリポソーム封入ストレプトマイシンの治療効果
- 感染症に対するリポソーム封入抗生剤の治療効果 : 1.マウスにおける実験的チフス症に対するリポソーム封入ストレプトマイシンの治療効果
- Bacillus thuringiensisによるマウス感染症 : 第2報:本菌ならびにBacillus cereusの温血動物に対する病原性を再検討する
- コッホの postulates と川崎病のA群溶連菌感染症説 : II.川崎病をA群溶連菌による感染症と考えたい
- Mycobacterium lepraemurium 感染マウスの interferon 産生と肉芽腫性炎症反応
- 感染症における感染防御免疫機構の研究(中課題I「腫瘍の発生と発育の条件に関する研究」を顧みて)
- (2)M. lepraemuriumの大量を感染したマウスの示す免疫反応(昭和56年度中課題(I)研究総会抄録)
- (1)被感染マウスの脾臓内に出現したsuppressor cellsの性状(昭和56年度中課題(I)研究総会抄録)
- (1)実験感染症の解析 : in vitro培養食細胞に於ける細胞寄生性細菌の動態について(昭和56年度中課題(1)例会抄録 : 腫瘍の発生と発育の条件に関する研究)
- 感染症におけるhost-parasite relationshipの分子生物学的解析 : 第5報:鼠癩菌ならびに腸炎菌のDNAと感受性を異にする各種近交系マウス細胞に由来するDNAの間における塩基配列相同性について
- 感染症におけるhost-parasite relationshipの分子生物学的解析 第4報,鼠癩菌と他種細菌ならびに諸種動物細胞由来のDNAの間における塩基配列相同性について
- Bacillus thuringiensisによるマウス感染症(第1報.腹腔内ならびに筋肉内感染に対するマウスの感受性)
- 3.ヌードマウスにおける感染症の解析(昭和54年度中課題(1),研究発表総会抄録)
- ペニシリン治療後の梅毒トレポネーマ感染ウサギにおける諸種抗原に対する免疫応答について
- 感染症におけるhost-parasite relationshipの分子生物学的解析第2報 : hydroxyapatiteクロマトグラフィーを併用したreassociation kineticsによる宿主と寄生体細胞のDNA塩基配列相同性の検査
- 細菌感染症に際して成立する細胞性感染防御免疫の癌免疫への応用(中課題I「腫瘍の発生と発育の条件に関する研究」を顧みて)
- 中課題I「腫瘍の発生と発育の条件に関する研究」を顧みて(中課題I「腫瘍の発生と発育の条件に関する研究」を顧みて)
- 感染症におけるhost-parasite relationshipの分子生物学的解析 : 第3報;ミコバクテリウム属の菌種と諸種動物細胞に由来するDNA間における塩基配列相同性について
- 大量の鼠癩菌を感染させたICRマウスにみられる細胞性免疫不全とOK-432の免疫増強作用
- マウスにおける生下時褐色脂肪組織部分摘除の体液性ならびに細胞性免疫の成立に及ぼす影響