動作分析に動作筋電図検査を用いた小脳出血の一症例

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今回、小脳出血のため歩行の安定性が著しく低下した症例 (68歳) を経験し、初期・最終評価時に歩行の動作筋電図検査を実施し問題点並びに治療効果について検討した。初期評価時では、左上下肢、体幹に失調症状が認められ、歩行は数m程度可能であったが、特に歩行周期中、左立脚中期に体幹の前傾が強まり左前側方に突進してしまう現象が観察されていた。そこで左腹筋群と左内転筋の筋緊張低下、両側腰背筋と左中殿筋の筋緊張亢進を問題点として考え、歩行における動作筋電図検査を実施した。測定筋として、左内腹斜筋・腰背筋・左内外腹斜筋重層部位・腹直筋・左中殿筋・左内転筋とした。分析方法として10m歩行中の3歩行周期を対象とし、各筋の1歩行周期における平均振幅値、筋活動パターンを求め同課題における健常者と比較検討した。結果、左中殿筋、左内転筋は健常者の筋活動パターンに類似していた。しかし左腹筋群は筋活動低下、腰背筋は筋活動増加という著明な筋活動パターン異常が認められた。この結果から主たる異常歩行の原因は、左腹筋群筋緊張低下と両側腰背筋筋緊張亢進という筋緊張パターン異常によることが確認された。治療は立位・膝立ち・四つ這いでの重心移動を中心とした運動療法を実施した。その結果、左内腹斜筋の筋緊張の正常化に伴い左立脚中期に観察されていた体幹前傾が軽減し左下肢への荷重が可能となった。動作筋電図検査の結果においても左腹筋群と腰背筋の筋活動パターンは健常者と類似するようになった。本症例の理学療法の結果より、左内腹斜筋を含めた体幹筋の筋緊張パターンの改善が、左立脚中期での体幹の安定性を向上させ、十分な左下肢への荷重が可能となったと考えた。また、動作筋電図検査は臨床における動作分析の結果を客観的に確認することができるという点で有用であることが示唆された。
2005-05-03

動作分析に動作筋電図検査を用いた小脳出血の一症例

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