医療と社会規範(第I報) : 医療行為の法的側面

概要

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生命科学の分野では,ヒトゲノム計画も終了しポストゲノムの時代と言われる。しかし新しい問題が指摘されている。一般にそれらは,ELSI (Ethical, Legal and Social Issues)と呼ばれる。ELSIは従来想定すらされなかった,狭義の医学や医療に包摂し切れないテーマである。その論点は多岐にわたり立脚する価値観も多様で,議論は拡散し焦点すら定まり難い印象がある。カオスとしてのEISIは,それはそれとして致し方ないのであろうか?それともELSIに対応するための基本的な『哲学』が欠けているのであろうか?本稿では何回かにわたり医療と社会規範との関係について考える。今回,社会規範として『法』を取り上げる。そして,いくつかの法の中で医療行為がどのように解釈され意味付けされているかを概観する。医療と法との関連を先ず整理し,今後のELSIの展開の切り口としたい。法という限られた範囲でもその射程は広大である。本論が今後のELSIの展開に役立てば幸いである。また本論では所謂先端医学・医療は登場しないし,法的な議論も既存法の範囲にとどまる。
大阪教育大学の論文
2004-09-30