酸処理エナメル質の表面微細構造に及ぼすフッ化物配合歯磨剤の影響

概要

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う蝕や歯周疾患だけでなく,炭酸含有清涼飲料水やスポーツ飲料水の頻繁な摂取によるエナメル質の表面脱灰(エナメル質erosion)が増加傾向にあり,歯の健康を考えるうえで,大きな問題となってきている。本研究は,エナメル質erosionに対してフッ化物配合歯磨剤がどのような影響を及ぼすかを明らかにする目的で行った。ヒト新鮮抜去永久中切歯のエナメル質表面を鏡面研磨した後, 0.1Mの塩酸に5分間浸漬し,酸処理エナメル質表面を人工的に作製した。酸処理エナメル質表面を25vo1%に希釈したNaF配合歯磨剤に5分間,24時間間隔で7回浸漬した。なお,コントロールには蒸留水および250ppmのNaF溶液を使用した。浸漬処理後,その表面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察を行った。AFM観察結果から,NaF配合歯磨剤処理によって,酸処理エナメル質表面の脱灰深さが減少した。また,エナメル小柱結晶の形態は,NaF配合歯磨剤処理によって,四角形から楕円形に変形し,その結晶サイズも大きくなる所見を認めた。これらのことから,フッ化物配合歯磨剤はエナメル質erosionの表面微細構造を改善できることが明らかとなり,エナメル質erosionの修復に関与することが示唆された。
有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文
2002-04-30