原子間力顕微鏡による乳歯エナメル質の表面微細構造の観察

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乳歯エナメル質表面に生じる初期う蝕の発生および進行過程を結晶レベルで明らかにすることを目的とした一連の研究を行う中で, 本研究の目的は, 原子間力顕微鏡(AFM)に適した乳歯エナメル質試料の作製方法を確立することにある.試料は, 着色や白斑のないヒト健全抜去乳犬歯および自然白斑形成のあるヒト抜去乳歯を用い, 注水下#1000の耐水ペーパーで5分間粗研磨したあと, 0.05μmのgamma alumina研磨剤を用いて, 90分の鏡面研磨を行った.また, 表層下脱灰は着色や白斑のないヒト健全抜去乳歯に表層下脱灰溶液に浸漬することにより作製した.各試料をAFM観察した結果, 乳歯健全エナメル質表層に存在する無小柱構造部分が除去され, エナメル小柱を示すアーケードフォームが確認できた.また, その表面の結晶形態は円形あるいは楕円形を呈する結晶が密に混在していた.人工的に表層下脱灰病巣を作製したエナメル質の表面は, 乳歯健全エナメル質の表面と比べると, エナメル小柱間隙および結晶間隙が拡大し, 結晶形態も円形および楕円形から, 正方形に変化することが確認された.一方, 自然に形成された白斑表面では, エナメル小柱を示すアーケードフォームが確認でき, 小柱間隙の拡大も認められたが, その拡大程度は小さかった.また, その結晶形態は長方形を呈することが明らかとなった.以上のことから, 本研磨法を用いることにより, 乳歯健全エナメル質, 乳歯人工表層下脱灰エナメル質および乳歯自然白斑形成エナメル質の表面を結晶レベルで観察できることが可能となり, 乳歯初期う蝕の発生に関わる表面微細構造を観察できることがわかった.
大阪歯科学会の論文
2001-09-25

原子間力顕微鏡による乳歯エナメル質の表面微細構造の観察

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