水田の節足動物相ならびにこれに及ぼす殺虫剤散布の影響 : 第 3 報 水田の節足動物群集の組成に及ぼす殺虫剤散布の影響
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概要
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殺虫剤散布延面積率が異なる徳島県下の6地区の各4地点の水田から1955年に節足動物を7回内外すくい取り採集し, 各地区間および各地点間において節足動物群集の分類学的および生態学的組成を比較し, これに及ぼしている殺虫剤散布の影響を解析した.1. 6地区24地点の水田においては, 主としてニカメイガとウンカ・ヨコバイ類防除のためBHCが1951年から, パラチオンが1953年から散布され, それらの年間散布延面積率は0∿200%の範囲にあった.2. 直翅目, バッタ科, キリギリス科, ハネナガイナゴ, コバネササキリなどの諸群の群集構成比率は殺虫剤散布延面積率と負の相関関係を示し, 後者が約25%以上の場所で顕著に低かった.直翅目昆虫は殺虫剤散布の影響をもっとも強く受けていると考えられた.3. 蜻蛉目およびイトトンボ科の群集構成比率は殺虫剤散布延面積率と負の相関関係を示し, 後者が約50%以上の場所で顕著に低かった.蜻蛉目昆虫は殺虫剤散布の影響を直翅目に次いで強く受けていると考えられた.4. 真正蜘蛛目, フクログモ科, ハマキフクログモ, ヒメコバチ科, タマゴヤドリコバチ科, Elachertus sp. a, ウンカタマゴヤドリバチなどの諸群の群集構成比率は殺虫剤散布延面積率と負の相関関係を示し, 後者が約80%以上の場所で低くなっていた.5. 半翅目, ヨコバイ科, ウンカ科, ツマグロヨコバイ, ヒメトビウンカ, セジロウンカなどの諸群の群集構成比率は殺虫剤散布延面積率と正の相関関係を示し, 後者が約80%以上の場所で高くなっていた.6. 膜翅目の群集構成比率は殺虫剤散布延面積率と負の相関関係を示し, 後者が約120%以上の場所で低くなっていた.7. 総翅目, 鱗翅目, 鞘翅目および雙翅目の群集構成比率と殺虫剤散布延面積率との関係は明瞭でなかった.8. 食植性群の群集構成比率は殺虫剤散布延面積率と正の相関関係を, 反対に食肉性群の群集構成比率は後者と負の相関関係を示した.9. 種多様性指数は殺虫剤散布延面積率と負の相関関係を示した.10. 殺虫剤散布の影響によって, 生息密度および群集構成比率が低下する種群は, 産卵数が少なく, 多くの場合年1世代と世代数が少ないため増殖力が小さい種群であると考えられた.11. 殺虫剤散布の影響によって, 生息密度および群集構成比率が高まる種群は, 上記と反対の種群であると考えられた.
- 日本昆虫学会の論文
- 1978-12-25
著者
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