オオムラサキの越冬終了後から羽化までの死亡過程とその要因
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
栃木県真岡市においてオオムラサキの越冬終了後から羽化までの死亡過程とその要因を調査した.越冬幼虫の個体数は, サイズの近似したエノキの木の間でも著しい差が見られた.2世代の自然個体群に関する生命表解析から, 越冬終了後の死亡率は5, 6齢幼虫で高いことが判った.この齢期の死亡要因にはアシナガバチによる捕食が認められた他, 同時に多数の個体数が消失したこと, 葉上に多数の鳥の糞が認められたことから, 鳥による捕食が重要であると考えられた.また, 密度を変えた実験個体群のつけ加えと網掛けによる鳥の排除実験から, 鳥による捕食率は越冬終了後の幼虫の木当たり密度に関連している傾向があった.すなわち木当たりの幼虫密度を高くした場合, 蛹までの生存率は, 無処理に比べ網掛けの木で有意に高くなったのに対し, 木当たり密度を低くした場合は無処理と網掛けの間に有意な差がなかった.以上のことから, オオムラサキの越冬終了後の幼虫は木毎に密度を異にした局所的な小集団として発生しているが, 小集団の中でも高密度の集団には鳥の捕食のような強い死亡要因が働き, 羽化個体数は低密度の集団と同じ程度にまで減少している可能性が考えられた.
- 日本昆虫学会の論文
- 1999-06-25
著者
-
稲泉 三丸
宇都宮大学・農
-
小林 隆人
宇都宮大学農学部応用昆虫学教室
-
稲泉 三丸
Laboratory Of Applied Entomology Faculty Of Agriculture Utsunomiya University
-
小林 隆人
宇都宮大学農学部応用昆虫学教室:(現)長坂町オオムラサキ自然公園オオムラサキセンター
-
小林 隆人
宇都宮大学
関連論文
- 森林面積率とエノキおよびオオムラサキの生息密度との関係
- エノキとクヌギの植林がオオムラサキの個体群に及ぼす影響
- 宇都宮大学峰キャンパスにおけるハムシ相と生息環境の変遷
- 栃木県から見つかったハムシ類
- 農地におけるシルビアシジミの生息適地の解析と保全
- 山梨県北杜市におけるオオムラサキ成虫の発生消長と餌の種類
- コマツナギアブラムシの生活環と未記載モルフの記載
- D302 コマツナギにおけるマメアブラムシの生活環について(生活史)
- 栃木県塩谷町において昆虫誘引器により捕獲された甲虫類
- 日本におけるダイズアブラムシの生活環
- ワタアブラムシ越冬卵の孵化率に影響する要因
- ワタアブラムシ無翅型モルフ幼虫の形態識別と齢期の判別
- セリフクレアブラムシの未記載モルフの発見と生活環
- ニワトコヒゲナガアブラムシに見られた 2, 3 の中間型モルフ
- ワタアブラムシの産卵部位
- ワタアブラムシの幼虫齢期の判別
- ワタアブラムシの越冬卵の孵化と幹母1齢幼虫の移動
- 日本産コメツキムシ科の後翅翅脈相に関する研究
- クロアゲハの食草外産卵と孵化幼虫の行方
- オオムラサキ野外成虫の性比
- オオミドリシジミFavonius orientalis(Murray)の産卵選好性と幼虫の発育との関係
- 栃木県真岡市におけるオオムラサキ幼虫の越冬期の死亡要因
- 寄主植物周囲の植生配置によるオオムラサキの卵から越冬直前までの死亡率と死亡要因の違い
- 寄主植物周囲の森林の面積と群落構造によるオオムラサキ幼虫の越冬後から羽化までの死亡率, 死亡要因の違い
- オオムラサキの越冬終了後から羽化までの死亡過程とその要因
- ワタアブラムシ有翅型モルフ幼虫の形態識別と齢期の判別
- ワタアブラムシの第 8 腹節背板の刺毛について
- ワタアブラムシの生活環と寄主を異にするバイオタイプ
- クサギアブラムシの生活環と雄および産雌虫の翅型について
- ワタアブラムシの主寄主植物の記録ならびに中間寄主植物への飛来について
- ワタアブラムシの中間型について
- ジャガイモに寄生するアブラムシ類の発生消長に影響する諸要因について
- 日本産オサムシ亜科の後翅の形態に関する研究
- ムクゲにおけるワタアブラムシの秋季生態に影響する落葉その他の要因
- 富士山麓・上ノ原草原における人為的管理が吸蜜植物の開花とチョウ類(成虫)の種組成に与える影響
- 越冬寄主上のワタアブラムシ胎生虫の生態および形態