ナラ類の集団枯損にみられる辺材の変色と通水機能の低下
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概要
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近年日本海沿岸で増加しつつあるコナラ・ミズナラの集団枯損は常にカシノナガキクイムシの大量侵入を伴うため, この甲虫による被害であると認識されてきた。しかし枯損の原因は不明である。7月から10月まで, カシノナガキクイムシの穿入や葉の萎凋がみられる個体を伐到し, 樹幹断面を観察して萎凋の原因およびメカニズムについて検討した。穿入孔のある個体すべてに辺材部の褐変つまり傷害心材の形成が認められた。この変色部はすでに通水機能を失った組織である。変色範囲は穿入孔が多い樹幹下部で広い傾向があった。樹幹に色素液を注入して木部の通導を調べるとカシノナガキクイムシ穿入個体では吸入量が非常に少なく, 樹液の上昇が著しく阻害されていることが判明した。カシノナガキクイムシの孔道周辺の大径道管には菌糸の分布が認められ, この甲虫により持ち込まれた菌と推定された。葉の萎凋に先だって樹幹下部では変色が拡大し, 当年輪の大径道管にもチロースが形成されていることから木部の通水は停止していることがわかった。その位置より上部では水分欠乏により材の乾燥や形成層壊死, 葉の萎凋が起こるものと判断された。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 1996-02-16
著者
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