卵巣癌の個別的化学療法の設定とその効果に関する基礎的検討 : ヌードマウス移植系を用いて
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概要
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卵巣癌の臨床治療において問題となっている諸点について検討すべく, ヌードマウスに移植継代されている7種のヒト卵巣癌株(OVA-1, -2, -3, -4, YST-1, -2, -3)を用いて実験を行った.用いた薬剤はadriamycin(ADR), bleomycin(BLM), cisplatin(CDDP), cyclophosphamide(CYC), 5-fluorouracil, ifosfamide, mitomycin C, vinblastine(VBL), etoposide, teniposideである.制癌剤は生理的食塩水0.2mlに溶解し, 担癌マウス腹腔内に4日ごとに3回投与した.抗腫瘍効果は, Battele Columbus Laboratoryの方式にのっとり腫瘍体積の縮小を指標とした.なおこの腫瘍体積の縮小は組織学的効果とよく相関することが確認できた.(1) マウスLD_<50>1/3量を用いて行った制癌剤投与実験の結果各腫瘍毎に同一の制癌剤に対する感受性が異なることがわかり, 腫瘍組織のタイプにより薬剤を選択して治療を行うことが必要であると考えられた.(2) ヒト投与量に相当すると思われるマウスLD_<50>の1/9の投与量を用いて (1) の結果と比較検討したところ, 薬剤によって差はみられるものの投与量を減じることにより明らかな抗腫瘍効果の低下がみられた.この結果から, 臨床治療において現在用いている薬剤の投与量をさらに増加する試みによって, より一層の抗腫瘍効果が期待できることが暗示された.(3) 実験的多剤併用療法としてPAC(CDDP+ADR+CYC)及びPVB(CDDP+VBL+BLM)を用い, その抗腫瘍効果を各々の単剤にて3倍量投与した場合と比較してみると, 多剤併用群よりもむしろ単剤で十分量投与した群においてより強い抗腫瘍効果が得られる傾向がみられた.薬剤の副作用を推測するために担癌マウス体重の減少を調べたが, 多剤併用群に比べ単剤大量投与群にやや体重減少が強くみられた.この結果, 副作用の問題を考慮外におくと, 実験系においては作用の発現が認められる薬剤の1剤による大量投与が多剤併用に比べてよりよい抗腫瘍効果が得られるものと思われた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-10-01
著者
-
本郷 二郎
大阪府立成人病センター婦人科
-
広田 義和
大阪府立成人病センター婦人科
-
稲垣 実
大阪府立成人病センター婦人科
-
澤田 益臣
大阪府立成人病センター
-
尾崎 公巳
大阪府立成人病センター婦人科
-
澤田 益臣
大阪大
-
沢田 益臣
大阪大学微生物病研究所
-
尾崎 公巳
大阪府立成人病センター
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