正常妊娠におけるextravillous trophoblastの分化について
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概要
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脱落膜のextravillous trophoblast (EVT) をcytotrophoblast (CT) からsyncytiotrophoblast (ST) への移行期細胞と同様にintermediate trophoblastと総称する命名法がKurman et al.により提唱されているが, その背景にはvillous trophoblast (VT) の分化とEVTの分化とは同一であるとの考え方がある。研究報告の少ないEVTの分化の過程を解明する目的で, 形態学的ならびに免疫組織化学的研究を行い, 以下の成績が得られた。1. 医学的適応により摘出された正常妊娠子宮25例の胎盤着床部組織をヘマトキシリン・エオジン (HE) 染色, および抗cytokeratin抗体を用いた酵素抗体法で染色し, trophoblastの組織内分布を観察した。妊娠6週ですでにtrophoblastの脱落膜浸潤が, 妊娠10週より多核trophoblastが子宮筋層に認められた。また, 脱落膜血管壁へのtrophoblast浸潤と血管周囲の変性壊死像がみられた。EVTは新たな絨毛間腔を形成し, 胎盤の基本的構築の樹立に関与しているものと推察された。2. VTでは多核のSTにだけhCG, hPLが認められるのに対して, EVTではhCGは一部の単核細胞に, hPLはすべての単核, 多核細胞に認められた。また, trophoblastに対する単クローン抗体 (抗Trop1およびNDOG1) の反応性についても検討を加えた。CTと反応する抗Trop1およびSTと反応するNDOG1はともにいずれのEVTとも反応しなかった。胎盤蛋白の局在と細胞膜抗原に明らかな相違点がみられることから, EVTはVTとは異なった分化を遂げると考えられた。3. cell columnの単核trophoblastにhCG, hPLは認められない。cell column絨毛側で細胞増殖したEVTはcell columnを介し脱落膜へ浸潤してゆくが, cell columnでは低分化なtrophoblastは脱落膜侵入後, 胎盤蛋白産生能など高度な分化を遂げるものと推察された。以上の成績より, trophoblastはCTとSTとからなるVTと, cell columnの単核細胞, 脱落膜の単核細胞, 子宮筋層にみられる多核細胞からなるEVTとに分類するのが妥当と考えられた。
- 1996-05-01
著者
-
高橋 威
新潟がん
-
笹川 基
新潟県立がんセンター新潟病院婦人科
-
高橋 威
新潟県立がんセンター
-
本間 滋
新潟県立がんセンター新潟病院産婦人科
-
渋谷 伸一
聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター・周産期科
-
渋谷 伸一
聖隷浜松病院 産婦人科
-
本間 滋
新潟県立がんセンター新潟病院
-
笹川 基
新潟県立がんセンター新潟病院
-
遠藤 道仁
新潟県立がんセンター新潟病院産婦人科
-
渋谷 伸一
新潟県立がんセンター新潟病院産婦人科
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