当科で取扱った卵巣粘液性境界悪性腫瘍23例の臨床病理学的検討
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概要
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当科で手術を施行した卵巣粘液性境界悪性腫瘍23例(境界悪性群)について臨床的検討を行った.手術進行期はIa期16例,Ic(a)期2例,Ic(b)期5例とすべてI期であることから,粘液性悪性腫瘍(悪性群)I期25例(Ia期13例,Ic(a)期4例,Ic(b)期8例)を対照とした.平均患者年齢は,境界悪性群45.3歳,悪性群56.0歳で,境界悪性群で有意に低かった.両群間で,血清腫瘍マーカー(CA125,CA19-9,CEA)の陽性率に有意差はなかったが,CA125値は悪性群で有意に高かった.両群間で,腫瘍径に有意差は認められなかった.境界悪性群13例および悪性群16例で術中迅速病理組織診が行われ,境界悪性群10例,悪性群10例が正診されていた.境界悪性群3例と悪性群6例は,迅速病理診断で過小評価されていた.初回手術において,悪性群の多くの症例で卵巣癌の基本術式またはそれに準じた術式が選択され,境界悪性群では腫瘍核出術,患側付属器摘出術など縮小手術が行われた症例が比較的多かった.悪性群11例で術後化学療法が追加されたが,境界悪性群で化学療法を行った症例は1例もなかった.両群の累積生存率曲線に有意差はみられなかったが,境界悪性群では再発が1例もなかったのに対し,悪性群では3例が基本的根治手術と補助化学療法を施行されたが,再発・死亡した.境界悪性群と悪性群では予後が異なることが推察された.境界悪性腫瘍の細胞増殖能を,核分裂像とKi-67陽性率の観点から検討した.核分裂像を示す細胞数は境界悪性群と良性腫瘍の間に有意差はなかったが,Ki-67陽性率については境界悪性群は良性腫瘍よりも有意(p<0.01)に高く,悪性群に近い結果が得られた.これらのことから,境界悪性腫瘍では細胞増殖能が亢進していると考えられた.また,境界悪性腫瘍の腫瘍胞巣周囲に観察される腺腫の細胞増殖能は通常の良性腺腫と境界悪性腫瘍の中間に位置することが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2002-12-01
著者
-
児玉 省二
新潟県立がんセンター新潟病院産婦人科
-
児玉 省二
新潟県立がんセンター新潟病院
-
本間 滋
新潟大学医学部産科婦人科学教室
-
笹川 基
新潟県立がんセンター新潟病院婦人科
-
高橋 威
新潟県立がんセンター
-
網倉 貴之
新潟県立がんセンター新潟病院産婦人科
-
本間 滋
新潟県立がんセンター新潟病院産婦人科
-
本間 滋
新潟県立がんセンター新潟病院
-
笹川 基
新潟県立がんセンター新潟病院
-
高橋 威
新潟こばり病院
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