幼児における空間的な量を表わす言語に関する発達的研究
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概要
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本研究では,幼児における空間的な量を表わす言語の発達を,次の2つの基本的な考え方に基づいて検討することを目的とした。 (1)空間的な量を表わす言語は,相対的な比較用語である。しかし,幼児はこれらの語を,まず,指示用語として使用し,やがて,年齢的な発達とともに比較用語として使用できるようになる。したがって,幼児の空間的な量を表わす語の獲得を論じるときは,比較用語として使用できることを獲得の基準とする必要がある。 (2)数ある空間的な量を表わす語のうちで,「大きい」という語はもっとも基本的な語であり,幼児は「大きい」という語を高さや長さの比較にも用いる。このように「大きい」という語を使うことと,彼らのかさの判断には強い関連があると予想される。 以上の2つの考えに基づいて,3つの実験を行った。得られた主な結果は,次のとおりである。 1.空間的な量を表わす8組の語を,理解語,および表現語で,比較用語として使用できる幼児の割合を明らかにした。獲得の割合がもっとも高い語は「大きい」「小さい」の基本語である。また,一般に,理解語の獲得は表現語の獲得に比べて早い。 2.比較用語としても空間的な量を表わす語を使用できる幼児でも,量を表わす語と個物との結合を強化する教示が与えられたときは,言語の指示作用が優先してしまって,指示用語として使用する段階へ戻ってしまう傾向が認められる。この傾向は年少児ほど強い。 3.実際の体積にかかわらず,年少児ほど垂直次元では「高い」物体,また水平次元では「長い」物体をかさが大きいと判断する傾向が強い。 4.高さを比較する場合に「高い」という語を使用できずに「大きい」と表現する幼児は,「高い」と表現できる幼児よりも,年長児では「高い」物体のかさを大きいと判断する傾向が強い。また同様に,「長い」という語を使用できずに「大きい」と表現する幼児は,「長い」と表現できる幼児よりも,年長児では「長い」物体のかさを大きいと判断する傾向が強い。
- 日本教育心理学会の論文
- 1980-12-30
著者
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