Atriplex triangularis(C_3)とA.rosea(C_4)の正逆種間雑種および後代の光合成特性
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概要
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C_3・C_4光合成の遺伝を研究する目的で,アカザ科,Atriplex(ハマァカザ)属のC_3種とC_4種の種間交配を試みた.交配には胚培養法を適用した.A.triangularis-1(C_3,♀)XA.roseaの組み合わせで1個体(F_1(C34))雑種が得られた.A.triangularisは十字対生,A.roseaは互生であったが,F_1(C34)個体の葉序は対生であるが,側枝の太さが左右一定でなくて一方が大きくなり,あたかも互生のようだ草姿であった(Fi91).維管束輸細胞は小さく,葉肉細胞の配列は疎で不規則であった。花粉稔性は72%であった.葉のδ^13C値は両親の中間の値であった(Fi9・2).A.hortensis f.lutea(C_3)XA.roseaから得た1個体も,δ^13C値の測定の結果雑種と思われたが,本葉が2枚展開した後に枯死した.A.rosea(C_4,♀)XA.triangularis-1の組み合わせから雑種が3個体得られた.これらの雑種のうち,1個体は幼植物の時に枯死し,他の1個体は不稔であったが,もう1個体(F_1(C43))の花粉稔性は83%であり,種子稔性も高かった.A.rosea(♀)×A.triangularis-2の組み合わせで得られた雑種1個体も,δ^13C値の検定の結果雑種であると思われたが,本葉2枚の時期に枯死した(Fig.2)。正逆の交配組み合わ昔から得られた雑種,F_1(C43)(A.rosea(C_4)XA.triangularis-1(C_3))とF_1(C34)(A.triangularis-1(C_3)×A.rosea(C_4))を比べると,形態的に両者は良く似ており,顕著た差を見出せなかった. F_1(C34)およびF_1(C43)のそれぞれの自殖種子をえて,F_2(C34)52個体,F_2(C43)22個体と,それぞれのF_3植物体数系統を供試した.F_2植物の発芽率は,両親系統同様,50〜70%であった.花粉稔性はおおむね70%以上であり,F_2(C34),F_2(C43)各10個体の減数分裂時における染色体行動も,1個体を除いて正常であった.F_2(C34)は対生45個体,互生4,中間的なもの3個体に分離した.F_2(C43)は対生21,互生1に分離した.F_2(C34)の中間型を互生とし,互生葉序が劣性の遺伝子に支配されるとすると,2対の遺伝子を仮定することによって,葉序の分離は説明出来た(x^2=0.033).
- 1988-03-01
著者
-
杉山 達夫
名古屋大学大学院生命農学研究科
-
杉山 達夫
名古屋大学農学部
-
角田 重三郎
東北大学農学部
-
日向 康吉
農業生物資源研究所
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小黒 仁司
東北大学農学部
-
鮫島 宗明
農業生物資源研究所
-
角田 重三郎
(現)東北大学名誉教授
-
小黒 仁司
東北大学農学部:(現)宮城県農業短期大学
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