イネ品種の空気湿度に対する葉光合成反応と導管断面積の大きさ

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イネは一般に湛水条件下で栽培されているが,大気の空気湿度の低下によって,葉光合成速度が低下することが報告されている(ISHARA et al. 1978, HIRAI et al. 1984).また,H0RIE(1979)は葉光合成と蒸散に及ぼす気温と空気湿度の相互作用を評価している.しかし,いずれもイネの品種間差異についての知見はなく,葉形質との関連も葉窒素含量や葉面当り葉身重(SLW)を除いて明らかではない.そこで,葉形質として葉身への水分供給系の大きさ(ここでは葉身基部の総導管断面積とした)を取り上げ,これと空気湿度に対する光合成反応との関係を世界に栽培されている品種でみて,適応性の観点から考察した. 供試品種(Table 1)は国際生物学事業計画(IBP)の生殖質の保存と利用に関する研究(UM)部門のイネの適応性試験に用いられた共通品種の中から13品種を選び,それに日本の陸稲6品種を加えた計14品種とし,最高分けつ期に2段階の空気湿度(同化箱内平均相対湿度,約70%と50%)条件下で葉身の光合成及び蒸散速度を測定した.測定葉身について,葉面積,乾物重,窒素含量,含水量,葉身基部の導管断面積等を観察した. 供試品種のうち,インド型品種ではSLWおよび葉身窒素含量と葉面積に対する葉身基部の導管断面積比(RVA)との間に有意の正の相関関係が認められ,日本型品種に比べて,インド型品種はそのSLWと葉身窒素含量の割によく発達した導管断面積を持っていた(Fig.1).このRVAと低湿度空気下で観察した光合成速度との間には高い正の相関関係が見られた(Fig4).同様に,SLWと葉身窒素含量も低湿度空気下で観察した光合成速度と正に相関していた(Fig.2と3).このように,低湿度空気下での光合成速度の品種間差異には,SLWや葉窒素含量などの葉砂質のみたらず,葉身への水分供給系の発達に関係した形質(RVA)も関係することが示唆された.
日本育種学会の論文
1985-09-01

イネ品種の空気湿度に対する葉光合成反応と導管断面積の大きさ

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