アブラナ属ならびに近縁属植物における耐塩性の種間差異:光合成反応を中心として
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概要
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生育立地を異にするアブラナ属および近縁属植物12種をARNONの水掛液を基礎培養液として砂耕L,NaC1無添加区の外,0.05M,0.1MのNaClを添加した区を設け,NaC1添加による葉光合成速度の低下の程度を指標にして,これらの植物の耐塩性を比較した。さらに葉の蒸散速度,クロロフィル含量,水分含量,NaおよびK含量を測定し,光合成速度との関係を調査した。光合成速度はNaCl添加によりすべての種で低下したが,低下の程度には種問差異が認められた。海岸に生育立地をもつ種は低下の程度が軽く,内陸に生育立地をもつ種は大幅に低下した。光合成速度の低下と蒸散速度の低下との問には密接た関係が認められ(O.05M,0.1M両区とも1%水準で有意た正相関),NaCl添加により大幅に光合成速度を低下した種は同時に蒸散速度も大幅に低下した。また,NaCl O・1M区で光合成速度の大幅に低下した種は水分合最を増加した(5%水準で有意な負相関)。クロロフィル含量の変化と光合成速度の低下との間には有意な関係は認められなかったが,Brassica属のFruticulosaサイトデームの種やSinapis属の種においては,両者間に正の関係がある傾向が認められた。NaC1添加により葉Na含量は著しく増加し,逆にKは減少した。光合成速度の低下とそれぞれ個々のNa含最またはK含最の変化との間には有意た相関は認められなかった。しかし,NaCl O.1M区でNa+K含量の増加程度の著しい種ほど光合成速度を低下していた(1%水準で有意な負相関)。NaCl添加により葉肉のNa+K含最が著しく増加した場合には,それに伴う浸透圧の増加が葉水分含量の増加をもたらす。しかし,高圧状態がたお解消できず,葉の生理的乾燥状態がつづいているために,葉のガス拡散抵抗を高めて蒸散速度を低下させ,それに伴って光合成速度をも低下させたものと推察される。
- 日本育種学会の論文
- 1981-12-01
著者
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