オオムギとコムギの葉のねじれと葉面の傾き
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概要
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葉のねじれ(旋回性巻葉)はイネ科ウシノケグサ亜科に属するオオムギやコムギの特性の一つである。筆者はこの特性は植物からの熱の逸散や水の逸散を制御するほか,個葉の受光や葉群内への光の透過にも関係する特性であり,育種上も環境適応性や多収性との関連で考慮すべき特性であると思考する。ところが従来あまり研究されていない.本資料の第一部は葉のねじれについての品種間差異をみたもので,観察に供した野生オオムギ,栽培オオムギ,野生コムギ,栽培コムギのいずれもが葉を旋回させていたこと,旋回の程度(単位葉長あたりの旋回角度)については有意の品種間差異が認められたこと,品種を上の4群にわけた場合の群間の差は有意ではなかったこと,などを指摘した(表1)。本資料の第二部は,葉の旋回と近年植物育種で重視されている葉面の水平面に対する傾斜角度との関係を取り扱ったものである。角田(1959)は,イネの葉の平均葉面傾斜角度を,葉を等長の10部に分けたときの各部の葉面積と中肋傾斜角度から求めたが,オオムギのように葉がねじれている場合はさらにこの形質が関係する.それで分割各部の葉面積,中肋傾斜角度,ねじれの角度を測定して,葉面の平均傾斜角度を求める手法・数式を提示した(図1,数式1と2)。そしてオオムギの葉とイネの葉を比較した場合,たとえ葉の長さそして葉の湾曲の様相が同様でも,葉形のちがい(葉幅の広い部分がイネでは葉長で中央部,オオムギでは基部に近い部分,図1参照)と葉のねじれの有無(オオムギはねじれ,イネはねじれない)の二つの理由で,オオムギの葉のほうが,イネの葉よりも,より強く水平面に対して傾斜することを指摘した。また渦性のオオムギ品種大麦渦1号の第2上位葉の葉面の平均傾斜角度が並性のオオムギ品種赤城二条のそれよりも大であったこと(69°と50°,図1),そしてこの場合は中肋傾斜角度(葉が直立的かなびいているか,図2)が葉面平均傾斜角度を左右した主要因であったことを指摘した。
- 日本育種学会の論文
- 1997-12-01
著者
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