赤さび病感受性を指標とした四倍性コムギの起原と分化に関する研究(予報) : コムギ属植物のコムギ赤さび病菌2レースに対する感受性
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概要
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四倍性コムギの起原と種の分化に赤さび病感受性がどのような関連をもつか考察する目的で,モデル実験としてコムギの系統発生に重要た地位を占める8種23変種・系統を選定し,コムギ赤さび病菌2レースに対しての幼苗接種試験に供試した。弱病原性のレース1Bに対して一粒系栽培種 T.monococcum,二粒系野生種 T.dicoccoides 1変種,チモフエビ系野生種 T.araraticum,チモフエビ系栽培種 T.timopheevi および普通系栽培種 T.spelta 2 変種は抵抗性を,一粒系野生種 T.aegilopoides,二粒系栽培種 T.durum 1 変種,普通系栽培種 T.spelta 1 変種および T.araraticum は罹病性を,また,二粒系 T.dicoccoides 2 変種たらびびに T.durum 2 変種は個体間で分離した感受性を示した。強原性のレース21Bに対して一粒系栽培種 T.monococcum とチモフエビ系栽培種 T.timopheevi は抵抗性を,二粒系栽培種 T.durum 2 変種と普通系栽培種 T.spelta 1 変種は個体間で著しく分離した感受性を,他の供試コムギ属植物は罹病性を示した。一粒系野生種を除く3野生種は,レースの違いによって異たる感受性を示した。すなわち,強病原性のレース21Bに対してはすべて罹病性を示し,感受性の変化がみられた。全体として弱病原性のレース1Bに対し変異のある感受性を示すものが強病原性のレース21Bに対しては安定た感受性を示す傾向が認められた。供試コムギの両レースに対する感受性から種や変種の地理的分布および系統学的近縁性は赤さび病感受性と関連性をもつことが認められた。また,感受性は種あるいはゲノム型により規定されていることが推定された。以上のモデル実験の結果から,コムギ属の起原と種の分化に関する研究において,感受性を指標とした分析すなわち生物一生物間の相互関係(宿主寄生者相互作用)を応用する研究手法は新しい分野を提供するものと考えられた。
- 日本育種学会の論文
- 1982-09-01
著者
-
石田 紀郎
京大
-
石田 紀郎
京都大学農学部
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田中 正武
京都大学農学部生殖質研
-
田中 正武
京都大学農学部(現)横浜市立大学木原生物学研究所
-
斉藤 初雄
農林水産省中国農業試験場
-
斉藤 初雄
京都大学農学部:(現)愛知県農業総合試験場山間技術実験農場
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