Capsicum annuum における相互転座による染色体構造分化について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
新世界に起原したトウガラシは,4つの栽培種からたる。それらのうち,C.chinense,C.baccatum 及び,C.pubescens の3種は,主として中南米でのみ栽培されているのに対し,C.annunm var.annunm は,世界中の温帯から熱帯にかけて広く栽培されている。その野生型Var.minimum は,合衆国南部,メキシコ,グァテマラから南米のペルー低地に自生している。筆者らは,C.annunm の両変種間の類縁関係を明らかにするため,京都大学による中央アメリカ及び中央アンデス地域の植物探索によって得られた材料を中心に種内のF_1雑種を作出し,その成熟分裂を観察した。その締果,野生型には,相互転座による染色体構造分化が認められ,供試系統をその染色体構造に基づいてA,B及びCの3群に分類することができた。この3群間にみられる多価染色体に関しては,A-B群間,A-C群問の雑種は4価,B-C群間は,6価を生じた。供試系統の多くは,A群に属し,染色体構造に関しては,A型が最も普遍的な型であり,B及びC型は,A型から染色体構造分化により生じたものと思われる。B型の地理的分布は,メキシコ,ボリビアに,C型のそれは,グァテマラである。野生型に見られる核型の地理的分布による大きな変異(PICKERSGILL 1971)から判断すると,野生型には分布の各地で染色体構造分化が起こっている可能性がある。一方,栽培型に一は,構造変異は認められず,供試系統はすべてA群に分類された.なお,我が国対馬在来種もA群であった。本結果並びに栽培型の核型が均一なこと(PICKERSGILL 1971)を考え併せると,栽培型の起原は比較的新しく野生のA型群から起原したと結論される。
- 日本育種学会の論文
- 1984-12-01
著者
関連論文
- Vigna属の種間にみられる種子貯蔵蛋白質の電気泳動像変異
- Capsicum annuum と C.baccatum の種間雑種の細胞遺伝学的研究
- リョクトウ×ケツルアズキ、リョクトウ×ツルアズキの交雑により得られた雑種について
- Capsicum annuum における相互転座による染色体構造分化について
- トウガラシの3種, Capsicum chinense, C.frutescens 及び C.baccatum 間の細胞遺伝学的類縁関係に就いて
- 世界各地から集めたトウモロコシ在来品種の農業生態的諸特性について : .ペルーおよびボリビア在来品種
- 野生四倍性コムギの種分化と赤さび病感受性
- 赤さび病感受性を指標とした四倍性コムギの起原と分化に関する研究 : I. メソポタミアで採集したコムギ赤さび病菌の病原性
- 赤さび病感受性を指標とした四倍性コムギの起原と分化に関する研究(予報) : コムギ属植物のコムギ赤さび病菌2レースに対する感受性
- 第6回国際コムギ遺伝学シンポジウムについて
- アジアにおける有用植物遺伝資源の探索・収集に関するシンポジウム開催される
- 昭和46年度大会学術講演 : アンデスに栽培植物の起源を求めて
- (72) 雑種形成による種の分化についての2, 3の知見 : 日本育種学会第26回講演会講演要旨 : 一般講演
- 〔65〕コムギの帯白性について : 日本育種学会第22回講演会講演要旨 : 一般講演
- 〔44〕単性花遺伝子の甜瓜への導入 : 日本育種学会第20回講演会講演要旨 : 一般講演
- 同質倍数性育種の現況
- 〔4〕コムギにおける矮性遺伝子について : 日本育種学会第18回講演要旨
- [4]コムギ属における一矮性遺伝子の分布 : 日本育種学会第14回講演会講演要旨
- [49]Solanum GIlo RADDI x S.Melongena L.から育成した赤茄子について(続) : 日本育種学会第13回講演会講演要旨 : 一般講演要旨
- 26.小麦及びエギロプス属の春播,秋播性 : 日本育種学会第七回講演会講演要旨
- 9.甜瓜の人為倍数体(III)花粉の発芽試験 : 日本育種学会第五回講演要旨
- 22.甜瓜の人為倍数体II : 日本育種学会第四回講演会要旨
- 菜豆における種子貯蔵蛋白質の電気泳動像変異
- 植物遺伝資源の探索と収集 (植物遺伝資源)
- ナスの台木としての南米原産ナス科野生種の利用
- 5.胡瓜の人為倍数体に就いて : 日本育種学会第1回講演要旨