ペチュニアの培養胚珠における前胚の発育について
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概要
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胚珠培養法を育種に利用するための基礎研究はいくつか試みられている。これらの報告では,若い胚珠の培養には複雑な条件が必要であることが示されているが,培養胚珠の初期の発育の様子については,はなはだ貧弱な知見しか得られていたい。本実験では,Petunia hybridaVilm.の受精直後の胚珠を培養し,特に初期の胚発生を組織学的に観察した。 培地として,齋糖濃度を種々に変えたNlTSCHの培地にビタミン類を加えたものを使用した。すなわち培地の浸透価を変化させた培地を用いた。これは,予備実験で,マニトールを用いて培地の浸透価を調整しても,庶糖のみで調整しても,完熟種子率において同様の結果を得たことに基づくものである(Table1)。 受粉後4目目の胚珠を3日間培養し,組織学的観察を行った結果,多くの胚珠が自然状態でみられるような正常な発育をしていることが認められた。培養胚珠のすべてについて観察した結果,正常な初期球状胚の認められる胚珠の数は,培地の蔗糖濃度により異なった。すなわち庶糖6%の培地上において最も多く,置床胚珠の72%に初期球状胚が認められた。受粉後3目目の胚珠を4日間培養し,同様に観察した。この場合置床された胚珠はさらに顕著に培地の蔗糖濃度の影響を受けた。すなわち,初期球状胚の認められる率は庶糖8%の時42%で,その他では著しく減少Lた。受粉後3日目の胚珠は.胚乳の分裂も明らかでなく,接合子をもつきわめて若い胚珠であるが,培地の浸透価が適当であれば,発育して初期球状胚を形成するにいたることが明らかとなった(Table2)。これらの結果は,前報で示した完熟種子率に対する培地の浸透価の影響に関する結果と一致した。このことから,胚珠培養において初期の培養条件が重要であると考えられ,特に培地の浸透価は前歴の発育に重要な意義をもっていると考えられる。 自然状態で初期球状胚の段階にまで発育した胚珠は簡単た培地で培養可能であるが,受粉後3目目の胚珠はそのようた培地では完熟種子に発育しえないことは前報で述べた。しかし本実験で,初期の胚発生は進んでいることが明らかとなった。さらに,得られた初期球状胚を含む胚珠をキウリ果汁を添加した培地に移植すると,発育を続け発芽するにいたった(Table3)。この事実から,先に得られた前歴は,適当な条件があればその後の発育を続け得るものであると考えられた。また,受精直後の胚珠では,正常な胚発生を継続するための生理的条件が整っていないように考えられる。
- 日本育種学会の論文
- 1975-06-30
著者
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