ペチュニア胚珠の培養条件について
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概要
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胚珠培養法は種子形成の機構を明らかにするための有効な手段である。また試験管内受精など育種技術の基礎研究にとっても重要であると考えられている。しかしながら現在のところ,胚珠の培養法が確立されているとは言いがたい状態である。そこで,本実験では胚珠培養法を確立するための基礎研究として,ペチュニア(Petunia hybrida Vilm.)の胚珠培養を行い,培養胚珠の発育に影響する培地条件について検討した。受粉後7日目の胚珠には球状胚が認められる。この程度にまで発育した胚珠は無機塩類,ビタミン類および庶糖を含む簡単な培地でよく発育することが認められた。とくに,培地の庶糖濃度を種々(4〜10%)に変えてみたが,いずれの濃度でも置床した胚珠のほとんど大部分が発育して完熟種子となった。 受粉後4日目の胚珠には,接合子と数細胞からなる胚乳が認められる。このような胚珠は培地の庶糖濃度の影響を受け,庶糖6%の培地でもっともよく発育したのに対し,庶糖濃度がそれより高い場合も低い場合も完熟する種子は減少した。とくに庶糖4%,9%の培地では,ほとんど完熟種子が得られなかった。 幼胚珠の培養にキュウリ果汁が有効であることが知られているので,キュウリ果汁の浸透価を調べてみた。若い果実からの果汁の方がより高い浸透価を示し,胚珠培養に用いられている開花後10日目程度の果実からの果汁は庶糖8%に相当する浸透価を持っていることが明らかになった。この事実にもとづき,培地に種々な濃度のキュウリ果汁を加え,培地の浸透価が庶糖6%相当になるように加える庶糖の濃度をおとした培地を調整した。たとえばキュウリ果汁25%を含む培地では庶糖は4%しか加えていないのであるが,このような培地で受粉後4日目の胚珠を培養したところ,いずれの培地でもほぼ同程度の率で完熟種子が得られた。すなわち,受粉後4目目の胚珠では浸透価が適当ならば,庶糖濃度やキュウリ果汁の濃度は胚珠の発育に影響をほとんどおよぼさないことが明らかになった。
- 日本育種学会の論文
- 1974-08-31
著者
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