試験管内受粉と胚珠培養による Nicotiana tabacum L. と N.rustica L. との交雑不和合性の克服
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概要
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Nicotiana tabacum L.× N.rustica L.の通常の交配では,N.rusticaの花粉管がN.tabacumの花柱の途中で伸長を停止するので受精が起らないことが知られている.本研究では,この組合せについて,試験管内受粉法と胚珠培養法を併用することにより,その交雑不和合性を克服し得るか否かについて検討した. あらかじめ除雄,袋かけをしておいたN.tabacumの花を開花当日に採取し,子房を表面殺菌した後,子房壁を除去して胚珠が密生した胎座を裸出させ,これを寒天培地に置床した.また,開花前日のN.rusticaの蕾から裂開前の葯を採取して殺菌し,ペトリ皿の中で開葯させて花粉を得た.試験管内受粉の操作は,寒天培地上に置床したN.tabacumの胎座に対してN.rusticaの花粉を散布する方法で実施した.受粉時の培地は,NITSCH(1972)の無機塩類にMAHESHWARI and LAL(1961)のビタミン類及びグリシン,ショ糖5%(w/v),寒天1.2%(w/v)を加えたものとした. 試験管内受粉後,胎座及び胚珠上で花粉の発芽,花粉管の伸長が認められ,受粉後4時間では500〜1000μm程窒の花粉管が観察された(Fig.1A,B).そして受粉後1日たつと花粉管の胚珠への侵入が認められるようになった(Fig.2).本研究では,試験管内受粉時にN.tabacumの子房基部を培地につきさし,2つの胎座の全面に受粉する場合と,胎座を培地に水平に置床する場合(片側の胎座は培地中に埋まり,もう一方の胎座にのみ受粉することになる)の2通りの方法を試みた.後者の方法によると切残された子房壁が培地浸潤液の胚珠及び胎座表面への上昇を防ぎ,多くの花粉管が胚珠へ侵入することが明らかとなった(Table4)ので,以後この方法を採用することにした.
- 日本育種学会の論文
- 1985-12-01
著者
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