Brassica胚珠の試験管内受精
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概要
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Brassicaのユキナ及びマナを用いて、試験管内受精の成功率を高める方法を検討した。(1)花粉発芽培地について検討した結果、培地をカバーグラスに塗布し、ハンギングドロップ法を用いた場合には、10%ゼラチン、2%蔗糖、0.1% CaCl_2、0.01% H_3BO_3がよかった。胚珠に直接培地を塗布した際には、4%ゼラチン、6%蔗糖、0.01% CaCl_2、0.01% H_3BO_3がよかった。またCaCl_2及びH_3BO_3の両者は花粉管の原形質流動を長期間保たせる効果があった。(2)Brassica類は蕾受粉もできるので、蕾から摘出した胚珠の培養を比較した。蕾の胚珠は傷害をうけ易く、培養のためには成熟した胚珠がよいことがわかった。この場合、花,あるいは枝を切りとることにより自家不和合性が部分的に解消する。(3)受粉後一定期間経過した胚及び胚珠を培養し、培地の条件を検討した。若い胚にはpHが4〜5、胚珠には5〜6が適し、成熟したものには若干高いpHがよい。蔗糖濃度については、若い胚には7〜10%、若い胚珠には5%がよかった。胚及び胚珠が成熟に近づくにつれ、2〜5%の糖濃度が適するように変化していく。胚珠培養の場合に、固形培地よりも液体培地表面に胚珠を浮かせた方がよい結果を与えた。(4)以上の知見を基礎にして、(a)花粉を発芽培地上で発芽させ、中央に置いた胚珠と受精させる方法、(b)胚珠に花粉培地を塗布し、胚珠上で花粉を発芽させ受精させる方法によって試験管内受精を試みた。処理胚珠の20〜30%が、胚培養可能なheart stage迄生育することをたしかめた。ユキナ×マナの一部をロゼット期迄生育させ、それらが受精したものであって、単為受精したものでないことをたしかめた。(a)の方法は操作が繁雑であるが、花粉管の状態観察ができ、花粉管の生理実験に適しているといえる。(b)の方法は、観察にほ不適だが、大量に処理できるので、雑種作成に適しているといえよう。ここでは花粉発芽培地及び胚珠培養培地を検討することによって試験管内受精の成功率を高めることができた。この手法は一般の高等植物にも適用できるであろう。育種的見地からすれば、林木等の受粉から受精迄の期間を短縮することにも利用できるであろう。
- 日本育種学会の論文
- 1970-10-31
著者
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