ツバキ属植物における細胞遺伝学的研究 : I.ワビスケ、ツバキおよびチャの成熟分裂および配偶子形成の比較
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概要
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チャの耐凍性品種を得るために、チャとチャ以外のツバキ属植物とを交雑することが多くの人によって行なわれている。ワビスケがチャとツバキの雑種であれば、チャとツバキとの交雑性も大きいと考えられる。したがって、著者らはいろいろの方法でチャとツバキを交雑することを試みているが、ここではまず、ワビスケの減数分裂と胚嚢および葯形成について報告する。成熟分裂については、ワビスケは品種により異なり、アカワビスケやシロワビスケではチャやツバキと同様に成熟分裂は正常に行なわれ、胚嚢や葯の形成も正常に行なわれた。ところが、スキヤワビスケとウスワビスケでは、成熟分裂に1価染色体が多くみられ、花粉稔性は1価染色体が多いものほど低かった。また、胚嚢と葯形成も異常が多くみられ、コチョウシロワビスケでは、ほとんど葯と胚嚢が形成されなかった。このためワビスケは、品種によって程度の差はあるが、染色体の間に非相同性があると考えられる。したがって今後核型分析をする必要がある。さらに、葯室形成において、チャ、ヤブツバキ、ワビスケにおいても、壁細胞が平行分裂し、外側の細胞が二層の中間層と内被を、内側の細胞がタペート層を形成し、開花時には、タペート層と中間層は退化していた。次に、チャでは、胚嚢形成において線状四分子が形成されるといわれてきたが、ツバキ、チャ、ワビスケにおいて、いずれも二分子しか形成されないとみてよいことがわかった。また、ワビスケの中にみられる葯形成と胚嚢形成の異常は、それぞれの始原体が形成されるときに異常がみられ、さらにそれぞれの胞原細胞の分裂の異常によることがわかった。そして、チャやツバキの場合と比較してみるとワビスケの胚嚢形成の時期と葯形成の時期が接近しているものほど、葯や胚嚢に異常の多いことがわかった。
- 日本育種学会の論文
- 1970-08-31
著者
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