チヤの耐凍性の品種間差異に関する研究 : VI 耐凍性増大時期の細胞内糖分布とくに<14>^C-sucroseによる組織化学的観察
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概要
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耐凍性の異るチヤの3品種を用い、耐凍性を増加するために、糖が細胞内のどの部分に多くあったらよいかについて、組織化学的および生化学的に観察した。葉をつけた枝の切口から0.3Mと0.1Mの庶糖液を14〜18℃の暗室で2日間吸収させると、同様な方法で水を吸収させた葉より耐凍性、細胞の浸透濃度および全糖含量が増加した。一方このような糖処理を行ってから、-20℃に1時間さらした葉から分離した葉緑体は、低温による傷害をほとんどうけなかったが、葉緑体中の蛋白質と結合する糖含最は増加しなかった。また糖を吸収させ耐凍性を増加させた葉から分離した葉緑体を水に浸し、低温処理を行うと、大きな傷害をうけたが、糖溶液に浸すと、全く傷害をうけなかった。そして糖濃度が高いほど、葉緑体は低温による傷害をうけなかった。また糖のみならず、グリセロールや食塩水によっても、葉緑体の、低温による傷害が小さくなった。これらの実験結果から、耐凍性を増大させるためには、細胞質内の糖濃度が高い方がよいと推定される。そこで庶糖溶液に<14>^C-sucroseを溶解させ、前述の方法で、この溶液を葉に吸収させ、オートラジオグラフで観察したところ、枝の皮層細胞では細胞膜に近い部分に<14>^C-sucroseの活性がみられた。このとき皮層細胞の浸透濃度と耐凍性はともに増大していたので<14>^C-sucroseでラベルされた糖が吸収されたと考えられる。一方組織化学的方法により皮層細胞の液胞の位直を観察すると、いずれも細胞の中央部分に液胞が分布していた。しかしこれら細胞内の<14>^C-sucroseの活性部位と液胞の部位とは、どの品種も差がみられなかった。以上の実験結果をあわせえ考ると、人工的に糖を増加させ、耐凍性を増大させるためには、チヤの皮層細胞では各細胞の液胞内ではなく、細胞質の部分に糖が多くあることが有効だと推定される。
- 日本育種学会の論文
- 1968-10-31
著者
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