鶏卵白泡沫の安定性に対するレオロジー的評価の試み

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家庭用泡立て器により調製した鶏卵白泡沫の状態を、その熟成による変化も含めてレオロジー的に記述することを試み、試料調製後約3時間以内の範囲でクリープ挙動および応力緩和の変化を追跡し、次の結果を得た。1.泡沫状態の記述には、クリープ挙動における瞬間弾性率、および応力緩和における初期弾性率と応力緩和時間を指標とすることが適当であると判断された。いずれの弾性率も、良好な泡沫状態を示す調製直後の試料について、およそ10^5dyne cm^<-2>のオーダーの値が得られる。2.泡立て時間5分以上で通常の泡沫状態が生成するが、それが10分を越えると液体膜表面に吸着したアルブミンの表面変性による光沢の低下が見られるようになる。しかし、このことに対応したレオロジー的性質の変化は現われない。3.相応のかたさとその持続性を備えた卵白泡沫の調製のために、砂糖の添加は必須条件の一つである。泡沫を構築する液体膜の排液による薄膜化が、砂糖の添加による水相粘度の増加と水和層斥力により抑制されると考えられる。4.酸の添加による卵白のpHの低下は、泡沫状態の持続性の劣化の原因になる。液体膜内部表面のアルブミン吸着層の電位が低下し、液体膜の薄膜化を抑制するアルブミン吸着層間の静電気斥力が低下する結果であろう。5.上記と同様な理由で、食塩のような電解質の添加は泡沫状態を劣化させると考えられる。アルブミン吸着層表面の電位分布が圧縮されるからであるが、予測に反し、食塩濃度が増しても弾性率の低下や泡沫状態の劣化はほとんど見られない。6.以上の結果は、いずれも調理書に示されている鶏卵白泡沫の調製条件と良く一致する。本実験では、泡沫のレオロジー的性質の測定と、泡沫を構築する液体膜の状態に対する考察を通して、泡沫調製条件の妥当性を検討した。
日本調理科学会の論文
1994-02-20

鶏卵白泡沫の安定性に対するレオロジー的評価の試み

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