イギリスにおける「2001年特別な教育的ニーズ・障害法」の内容と意義 : 「1996年教育法」の修正に焦点を当てて
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概要
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イギリスでは,2001年5月に労働党政権における特別な教育的ニーズをめぐる教育施策を方向づける「2001年特別な教育的ニーズ・障書法(Special Educational Needs and Disability Act2001)」が成立した。同法は,「1996年教育法」と「1995年障害差別法」の修正を意図したものである。本稿では,この内,前者の修正に関する分析を行った。その結果,全体的にみて,「1996年教育法」の内容に比べて,労働党政権が緑書や行動計画で示した方針に従い,よりインクルージョンを志向した修正がなされていることが明らかになった。特に,「1981年教育法」以降,表現の若干の修正はあるものの継承されてきた統合教育実施の3要件,すなわち,①その子どもが適切な教育を受けられる,②一緒に教育を受けることになる子どもの教育を妨げない,③財源の有効な活用,のうち①と③が削除されたことの意義は大きいものがある。また,従来にも増して親に対する情報提供の充実が期待される点,学校が法的評価を要請することを認めることができるようになった点,SEN裁定委月会の決定に地方教育当局が期限内にこれまで以上に従わなければならなくなった点,などが明らかにされた。The Special Educational Needs and Disability Act 2001 was given the final approval in May in Great Britain. The purpose of this study was to analyze the contents and significance of the Act. It was clarified that on the whole some modifications which intended to promote the inclusion were made. So far the three conditions mentioned below hindered the enforcement of the integration. Three conditions were that the child in a school which - is not a special school unless that is incompatible with (1)his receiving the special educational provision which his learning difficulty calls for, (2)the provision of efficient education for the children with whom he will be educated, and (3) the efficient use of resources. But the new Act deleted the (1) and (3) conditions. It was expected that parents are given more information than before, the local education authority must comply with the order made by Special Educational Needs Tribunal within the prescribed period, and schools can ask the local education authority to make the statutory assessments.
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