総説 : 水中運動時の生理応答
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,水中運動におけるヒトの生理諸応答を検討した。その結果の概要は,以下の通りである。水中での運動に対する応答の大部分は,質的には陸上運動に対するものと同じだが量的な違いがあり,水中でのレクリエーション,治療,リハビリテーション・プログラムの処方にはこの違いが重要となる。空気中とは異なる浮力,粘性,熱伝導性といった水の特性が,水中での最大下の有酸素性エネルギー消費量に影響し,運動様式,運動強度,水深,水温といった条件によって,陸上で同じ運動をした時より消費量は多かったり,同じだったり,少なかったりする。水中での運動で最大酸素摂取量を測定すると,陸上で傾斜をつけたトレッドミル上のランニングで測定した値より少ないことが多い。これは,水中では,最大心拍数が低いためであり,活動する筋量が少ないことや,作業筋のトレーニング度が低いことも関与する可能性がある。水中での最大下の運動による血中乳酸濃度は,同じような運動を同等の強度で陸上で行なった場合と比べて低い,等しい,高いと研究結果はわかれている。最大運動では,水中の方が血中乳酸濃度は低い。浸水することで心臓への静脈還流は増加し,運動に対する循環器系の応答も陸上での運動と異なる。垂直姿勢での最大下の運動では,陸上での同じ酸素摂取量が得られる強度の運動と比べて一回拍出量と心拍出量が多〈,高強度で比較すると心拍数は低い。心拍数と酸素摂取量の関係は,運動様式,運動強度,水深,水温によって異なり,同じ酸素摂取量に対する心拍数は低いことが多いため,心拍数を基準にした運動強度の処方,調節には注意が必要となる。水中では,水の静水圧の作用で,肺容量が変化するが,最大下の運動に対する換気応答は,基本的には陸上での運動と同じである。最大換気量は,最大酸素摂取量の減少と比例して低下する可能性がある。交感神経―副腎の作用,水分調節ホルモンの応答は,水中で垂直姿勢での運動中には抑制される。これは,血液が胸廓に集まるためである。交感神経系の活動低下と血中エピネフリン量の減少が,水中での強度の高い最大下の運動,最大運動で心拍数と血中乳酸濃度が陸上より低くなる理由だと推察される。水は熱を伝える性質が強く,比熱も高いため,伝導,対流によって,身体から熱が奪われたり,身体が温められたりといった作用が起こりやすい。水温によって運動中の深部体温は上昇する,変動しない,低下する場合がある。これには被験者の体脂肪量が関連すると考えられる。The purpose of this study was to investigate the physiological responses against water exercise through bibliographies. The major results are summarized as follows : Although most responses to exercise in water are qualitatively similar to those resulting from exercise performed on land, important quantitative differences exist that may affect exercise prescription for water recreational, therapeutic, and rehabilitative activity programs. The buoyant force, greater viscosity and increased heat conductivity of water compared to air usually alter aerobic energy expenditure during submaximal exercise in water so that it may be greater, the same, or less than during the same activity performed on land, depending on the exercise mode, exercise intensity, water depth and water temperature at which the exercise is carried out. Vo2max is often lower in many forms of water exercise than during uphill treadmill running on land because of lower maximal heart rate, and perhaps decreased working muscle mass and state of training of the muscles involved. Blood lactate accumulation during submaximal exercise in water may be less, the same, or greater than during comparable exercise on land at the same absolute or relative intensity. During maximal exercise, blood lactate accumulation is less during water exercise. The hydrostatic pressure of water immersion increases venous return to the heart and alters the cardiovascular response to exercise. During submaximal upright exercise, stroke volume and cardiac output are greater, and, at higher intensities, heart rate is lower than during exercise on land at the same Vo2. The relation of heart rate to Vo2 is variable and depends on the exercise mode, exercise intensity, water depth and temperature. The heart rate at a certain Vo2 is often lower during water exercise, so caution must be used in using heart rate to prescribe and regulate the intensity of water exercise. Although lung volumes are altered by the increased hydrostatic pressure of water, the ventilatory response to submaximal exercise is essentially the same as during exercise on land. Maximal ventilation may be reduced in proportion to the reduction in Vo2 max. Evaporation of sweat does not occur in water, and the higher heat conductivity and specific heat of water cause heat to be gained and lost more readily from the body through conduction and convection. Depending on water temperature, core body temperature may increase, stay the same, or decrease. Sympathoadrenal and fluid-regulating hormone responses are suppressed during upright exercise in the water because of redistribution of the blood volume to the thorax. Reduced sympathetic nervous system activity and blood epinephrine levels may account for the lower heart rate and blood lactate accumulation during strenuous submaximal and maximal exercise.
著者
関連論文
- 自閉症児・者とダウン症児・者の立ち幅跳びにおける運動様相のバイオメカニクス的比較分析
- 日本の女子大学生におけるタイプA/B性と一過性運動時の知覚応答の関係
- 594. アライメント教育を支援するタイツの開発(リハビリテーション・運動療法)
- 大学新入女子学生における抑うつ得点と運動中の主観的運動強度の関係
- 低水温下での着衣泳と水着泳による体温, ホルモンおよび代謝応答
- 体育専攻学生における体型と身体部位の満足感
- 思春期における身体部位の不満感と自己意識
- 21℃水温下での着衣泳と水着泳の生理、知覚応答
- 低水温下における着衣泳の体温調節反応と主観的応答
- 総説 : 水中運動時の生理応答
- 中高年を対象とした水中運動指導
- 1. 水中運動に期待する効果(第17回日本体力医学会北陸地方会)
- 568. 歩行支援タイツの生理応答(リハビリテーション・運動療法)
- アメリカにおける現代の水中運動療法
- ヨーロッパにおける現代の水中運動療法
- 近代の水中運動療法
- 水治療とスパの起源
- ミストサウナ浴が頭皮血流量へ及ぼす影響
- 高齢者に対する温浴体操の効果
- 114J00103 水泳教材のデータベース化に関わる研究(11.体育科教育学,一般研究発表)
- 114J00102 水泳指導に関する学習内容の開発 : サバイバル泳に着目して(11.体育科教育学,一般研究発表)
- 092 共 A30401 アクアジムを利用した水中運動に関する研究 : 運動効果に着目して
- 選手強化・管理のためのMIS(Management Information System : 情報管理システム)・体力情報に基づく競泳強化選手を対象としたいくつかのShort case study
- 競泳選手の非乳酸性および乳酸性能力評価のためのエルゴメータ用アタッチメントの開発と有酸素性能力評価併用へのアプリケーション
- 水中歩行時の体温および主観的温度感覚に及ぼす水温の影響
- 海水濃度が温浴時の体温変動に及ぼす影響
- 児童の異なる水温下での水泳における主観的運動強度の検討
- 0921802 心拍数からみた中高年者の水中運動中の連動強度
- 0921801 心拍数からみた大学生の水中運動中の運動強度の比較
- 0410814 異なる水温での児童の水泳における運動強度の指標としての主観的運動強度の妥当性
- 0921902 心拍数からみた遠泳の運動強度 : 低泳力群と高泳力群の比較
- 日本と韓国における新入大学生の運動、スポーツ活動に関する意識調査
- 0711514 発育・発達段階における水泳授業中の運動強度
- 093T17 幼児水泳指導の系統性と運動強度
- 温浴水中体操の開発と実証的効果
- 07発-1P-K12 日本・中国・韓国における女子中学生から大学生の体型と身体部位に対する満足・不満足感(07.発育発達,一般研究発表抄録)
- 356.水中運動教室において水中歩行が下肢筋力向上に有効か(トレーニング,一般口演,第60回 日本体力医学会大会)
- 04生-3P-P11 高校生アスリートの持久力評価(04.運動生理学,一般研究発表抄録)
- 320.水中トレッドミル歩行時での女性の体温変動
- 中年女性の水中歩行時の主観的運動強度
- 有酸素性作業能力の異なる中年女性の水中歩行時の生理・知覚応答
- 384.異なる水温条件下による高齢男性の水中歩行時生理応答
- 043I01 児童のプールでの自由遊び,水泳練習及び休憩における運動強度の比較
- 3種類の異なる水温下での低強度長時間水泳時の心拍・血圧応答
- 093なF03 競泳トレーニングに於ける Swim・Pull・Kick の運動強度について
- 0921807 クロールにおけるストローク速度と血中乳酸との関係について
- 生活習慣に及ぼす子どものスポーツ活動の影響--筑豊地域の子どものスポーツ活動と関連要因
- Blood pressure responses during walking in water in middle-aged and elderly women
- 「健康科学実習」における救急法(心肺蘇生法)導入に対する学生の評価
- 健康科学実習における高齢者疑似体験の試み
- 海水温浴および動水温浴が体温変動に及ぼす影響
- 独立歩行の開始時期と基本的動作の開始時期との関連
- 2〜6歳児の運動能力と妊娠期間、出産体重の関連
- 072H13 幼児の運動能力と食事について : 形態,運動能力,食事内容の相互の関連から(07.発育発達,一般研究発表)
- 072H12 幼児の運動能力と食生活の関連について(07.発育発達,一般研究発表)
- 251.水中運動を実施している中高年女性の体力, 血液性状および骨密度 : 厚生省の維持目標値を満たしている者と満たしていない者の比較
- 水中運動を実施している中高年女性の体力,血液および骨密度
- 344.水中および陸上での長時間運動時の体温調節反応
- P-9 呼吸頻度による換気性作業閾値の測定
- 水中歩行時の心臓血管系応答および主観的運動強度に及ぼす水温の影響
- 水中歩行負荷心電図の試み
- 人工海水温浴における塩類濃度が心電図に与える影響
- 人工海水温浴における塩類濃度が脳波に与える影響
- 水中歩行中の呼吸循環系に及ぼす水流有無の条件差の影響
- 海水温浴における塩類濃度が心拍応答に与える影響
- 海水含有成分が温浴時の体温変動に及ぼす影響
- 海水塩類濃度が温浴時の体温変動に及ぼす影響
- 605.低水温下での着衣泳の体温変動
- 心疾患患者の水中運動療法に関する基礎研究(第5報) : 水中トレッドミル(フローミル)を用いた水中歩行負荷心電図の試み : 口述発表 : 第57回日本循環器学会学術集会
- 0420902 低水温下での長時間水泳が体温調節反応に及ぼす影響
- 3種類の水温下での低強度長時間水泳に対するホルモンおよび代謝応答
- 358.水中歩行時の体温調節反応に及ぼす水温の影響
- 水泳選手の水泳時および走行時の呼吸循環系の応答
- 231.三種類の水温下での長時間水泳時の体温調節反応
- 104.水泳選手の水泳時における走行時の呼吸循環系の応答
- 103.回流水槽を用いた平泳ぎ中の心拍数-酸素摂取量関係
- 長時間水泳時でのスイムベルトが体温調節反応に及ぼす影響 : 生理人類学会第27回大会
- 低水温下における遠泳中の体温調節反応
- 長時間水泳時でのスイムベルトの保温効果
- 低水温下での着衣泳および非着衣泳時の体温応答に関する比較(予報)
- 海水による温浴時の体温変動および心拍応答
- 091L17 競技力向上における競泳指導者の研究(2) : 「対環境能力」に関して(09.体育方法,一般研究発表)
- 091L16 競技力向上における競泳指導者の研究(1) : 「対選手能力」に関して(09.体育方法,一般研究発表)
- 生活習慣に及ぼす子どものスポーツ活動の影響--筑豊地域の子どものスポーツ活動と関連要因
- 大分県民のライフスタイルとスポーツベネフィット
- 大学生におけるスポーツの便益構造
- 新しい水中心臓リハビリテーションにおける"フローミル"負荷心エコー図の有用性 : ポスター発表 : 第57回日本循環器学会学術集会
- 大学競泳選手の血中乳酸動態と心拍数・血圧との関係について
- 1332803 競泳選手の血中乳酸動態とトレーニングへの応用について
- 小学校における大学生のティーチング・アシスタント活動が児童の学校モラールに及ぼす効果
- 特別寄稿 深層海水温浴による成分濃度が人体に与える影響
- 健康科学実習におけるインターネット利用の受容性 : 異なる学問分野を志向する学生の評価による検討(大学体育教育研究(助成研究)No.15)
- 健康科学実習における高齢者擬似体験の試み
- 日本と韓国における新入大学生の運動、スポーツ活動に関する意識調査
- 大学生におけるタイプA行動パターンの日韓比較
- 独立歩行の開始時期と基本的動作の開始時期との関連
- 幼児の3歳以前と以後の遊び環境の変化と遊び内容の変化
- 基本的動作の初発期と運動能力について
- 幼児の跳躍運動における距離調整能力の発達について
- The Relationship of Physigue and Dietary Intake to Motor Ability in Childhood