幼児期における運動遊びと体育指導に関する一考察
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概要
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幼児期における体育指導の基本は幼児の行動能力を高めることにあると考えられる。この時期に得た行動能力は,その後の児童期・青年期へとつながり,一生を支配することになるといえる。幼児期における行動能力の多くは「運動遊び」によって獲得することは周知の事実であり,行動能力は行動観察や運動能力テストにより,獲得の量および質を知るのが一般的である。しかし,この時期の運動能力は経年に従い直線的に増大するが,4歳までの発達は未分化で性差がみられないこと,体格,年齢の要素は低年齢ほど運動能力への影響が大きいこと,日常生活における運動的遊びの質や量と体格,運動能力との間には相関が見られること等,から行動観察や運動能力テストに加え,身体的特性や遊び環境を含めた幼児の生活全般を総合的にとらえ,体育指導を行うことは,将来の満足できる成長・発達による健康的な生活実現への基礎づくりとして重要であると考える。そこで新潟県南西部に位置するA市(人口約3万人)の保育園に通う4歳児から6歳児(276名-895名)を対象に体格,体型,基礎運動能力,遊び環境,等を横断的,縦断的に調査し,その分析結果から,幼児期における発育・発達の適時性に合致した体育指導の基本的な考え方について検討し,次のような知見を得た。1.運動遊びは個々の活動を大切にしながら、行動力を高める指導が大切である。2.体格・体型は自らの行動力を高める積極的な因子と行動力を制限する消極的な因子を持っていることから,個々の得意な運動パターンを軸に行動力を高める指導が大切である。3.運動能力の獲得は,指導者の幼児に対する見方や運動能力に対する考え方が強く影響する。4.指導者は遊び環境の安全性に配慮しながら,工夫された人工的空間や自然的空間で、多くの仲間と自由に多様な遊びができるよう援助することが大切である。It is fundamental in physical education instraction to enhance motor ability. Motor ability which acquired in infancy affect for the rest of one's life. It is true that many of motor ability in infancy are gained in "playing activity". And we can measure their quantity and quality by observing activities and taking the test of motor ability. Motor ability show linear increase with aging in this term. However, 1) Development of children doesn't specialize by four years old. 2) Plysique affects motor ability stronger in younger age. 3) There is a correlation between quantity and quality of playing activity and physique, or motor activity in daily life. Observing activities and taking the test of motor ability, we have to take child's life as a total one which consists of physical characteristics, environment surrounding children. And it is important for children's healthy life in the future to do physical education instruction from the points of view. In this paper, we invistigated physique, body type, fundamental motor ability, environment at play ground about 276-895 pre-school children (3 - 6 years old). The results are as follows : 1) It is important for instruction of playing activity to enhance motor ability as we think about significance of each activity. 2) Physique and body type have two factors, One is to enhance motor ability and another is to restrict it. Therefore, instruction to enhance motor ability based on each child's favorite motor patterns. 3) Instructor's way of thinking against pre-school children and motor ability strongly affects acquisition of child's motor ability. 4) The point of instruction is to help children playing diverse activities freely with friends in a planed space.
- 上越教育大学の論文
著者
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土田 了輔
上越教育大学
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永木 耕介
兵庫教育大学
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永木 耕介
兵庫教育大学実技教育研究指導センター
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砥堀 雅信
上越教育大
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砥堀 雅信
上越教育大学生活・健康系教育講座
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土田 了輔
上越教育大学芸術・体育教育学系
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土田 了輔
上越教育大学生活・健康系講座
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