アトピー性皮膚炎患者における黄色ブドウ球菌特異IgE抗体と黄色ブドウ球菌由来物質による貼付試験
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概要
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アトピー性皮膚炎(AD)患者96例において,黄色ブドウ球菌(黄ブ菌)特異IgE抗体をRAST法で測定した.14例(14.6%)がスコア2以上の陽性であったが,重症例のみについてみると,27例中8例(29.6%)に陽性であり,軽中等症群に比べ明らかに高い陽性率であった.また,黄ブ菌特異IgE抗体陽性例において,血清総IgE値,ヤケヒョウヒダニ特異IgE抗体,食物抗原特異IgE抗体,および末梢血好酸球数について検討すると,その陰性群に比べ,血清総IgE値及び食物抗原特異IgE抗体でより高値ないし高い陽性率が認められた.すなわち,黄ブ菌特異IgE抗体陽性を呈するAD患者の多くは重症であり,同時に血清総IgE値が高く,ダニや食物抗原に対する特異IgE抗体も陽性を示す傾向にあるといえる.中等および重症AD患者33例(特に顔面に皮疹を有する患者)において,黄ブ菌の細胞壁,その培養液,プロテインAについてスクラッチ貼付試験を施行した.それぞれの陽性率は,48時間後判定で,45.5%,48.5%,33.3%であり,コントロール群10例での陽性率20.0%よりは高いものであった.ただ,3日目以後でも判定しえた3例では消褪傾向が認められ湿疹病変の出現もみられなかった.AD患者の中に,ダニ特異IgE抗体程は頻度は高くないものの,黄ブ菌特異IgE抗体陽性を呈するグループが明らかに存在した.また,黄ブ菌関連物質によるスクラッチ貼付試験陽性率は,コントロール群よりAD群で高い結果であった.これらの事実とほとんどのAD患者に黄ブ菌の接着がみられるという現状を考慮すれば,黄ブ菌の存在がADの病変の一時的病因とは言えないまでも,黄ブ菌がIgE抗体を介した経路を経てその増悪に何らかの関わりを持っていると考えられる.このためADの病変から黄ブ菌を適切な方法で除去ないしは減少させることが,その治療の一助として非常に重要であると思われる.
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文
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