産褥4日目に深部静脈血栓症（DVT）を発症した先天性antithrombin欠乏症の1症例

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妊娠に合併した深部静脈血栓症（deep venous thrombosis　: DVT）は，肺血栓塞栓症の合併のリスクもあり，妊婦死亡の大きな原因の1つとなっている．今回，われわれは産褥4日目に下肢の腫脹と疼痛にて発症したDVTの症例で，凝固能検査の結果，先天性antithrombin欠乏症と診断された1例について報告する．症例は，28歳の初産婦であり，経腟分娩後，産褥4日目に突然左下肢の腫脹と疼痛を訴えた．同5日目には安静時でも疼痛が出現し，下肢の発赤も認め，Homans徴候が陽性となった．造影CTを施行したところ左側大腿静脈に血栓の存在を疑う所見を認め，DVTと診断した．ただちに血栓溶解療法としてウロキナーゼ投与を行い，続いて抗凝固療法としてヘパリン投与を開始した．凝固能検査の結果，antithrombinの活性値が55%と低値であったので，antithrombinも投与した．さらに，産褥17日目よりワーファリンの経口持続投与を行った．症状が改善したのち，再度antithrombin活性を計測したところ，66%と低値であったこと，母親もantithrombinの活性値が低値であったこと，叔母が肺血栓塞栓症であったことより，先天性antithrombin欠乏症と診断された．本症例においては，肺血栓塞栓症は合併せず，その後の経過も良好であった．〔産婦の進歩54（4）：297-301，2002（平成14年7月）〕

産褥4日目に深部静脈血栓症（DVT）を発症した先天性antithrombin欠乏症の1症例

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