代用婦人頚管粘液に関する研究 : ウシ頚管粘液についての検討
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概要
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排卵前の頚管粘液 (CM)産生不全や抗精子抗体のCMへの移行あるいは精子CM不適合等のために, 頚管内での精子上昇が障害され不妊の原因となる場合が多くある. このような場合に代用CMの使用が可能であれば, 診断面や治療面からも大変に好都合である. 本論文では, 大量採取が可能な発情期のウシCMを用いてヒト精子の通過性について検討した. ウシCMは発情期にある未経産乳牛の子宮頚管より吸引採取し, ヒトCMは正常月経周期婦人の排卵直前のものを採取し, それぞれの結晶形成・牽糸性・ pH等を検索した後, -20℃で凍結保存したものを実験に用いた. 両者の凍結CMを室温で融解後, 毛細管(1.5×75mm)に吸引し,ー端は閉じ他端を精液貯溜槽に浸して直立させCM内での精子上昇距離・数・運動率・生存時間を経時的に判定し, 両者の比較検討をした. またCM内精子通過性に及ぼす抗精子抗体の影響についても両CMを用いて比較検討し以下の結果を得た. 1. CMの採取量は, ヒトの0.2〜0.5mlに対してウシでは5〜30mlの採取が可能である. 2. CMの結晶形成・牽糸性・ pHは両者で大差はなく, in vitro精子CM内通過試験でも6時間まではほぼ同様の精子上昇距離, 精子数および運動率を示した. 12時間以降になるとウシCM内では精子運動率は著明に低下し, 24時間後にはほぼ完全に消失した. 3. 乏精子症患者精子のCM内通過性は, ヒトCM内で通過障害の認められる症例ではウシCM内でも通過性が悪く, 両CMによる通過試験は良く平衡した. 4. 抗精子抗体結合精子のヒトCM内通過性障害は完全に阻止されたが, ウシCM内では自由に上昇し通過性障害は全く認められなかつた. 以上の実験結果は, 男性の抗精子抗体による精子CM不適合検査には, ウシCMは不適当であるが, その他の使用目的によつてはウシCMがヒトCMに代用し得ることを示すものである.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-07-01
著者
-
伊熊 健一郎
健保連大阪中央病院
-
伊熊 健一郎
宝塚市立病院産婦人科
-
香山 浩二
兵庫医科大学産科婦人科教室
-
礒島 晋三
兵庫医大
-
伊熊 健一郎
宝塚市立病院
-
伊熊 健一郎
兵庫医科大学 産婦人科
-
伊熊 健一郎
健康保険組合連合会大阪中央病院
-
礒島 晋三
兵庫医科大学産科婦人科学教室
-
斎藤 行生
兵庫医科大学産科婦人科学教室
-
武田 守弘
兵庫医科大学産科婦人科学教室
-
香山 浩二
兵庫医科大学先端医学研究所 発生生殖 部門
-
斎藤 行生
明和病院産婦人科
-
斎藤 行生
兵庫医科大学 産婦人科
-
礒島 晋三
兵庫医科大学 産婦人科
-
武田 守弘
市立川西産婦人科
-
武田 守弘
兵庫医科大学産婦人科学教室
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- 巻頭言
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