精漿抗原に対する単一クローン性精子不動化抗体産生hybridomaの作製とその性状分析

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不妊婦人の血中に特異的に検出される精子不動化抗体の対応抗原を分離精製することは不妊症の病態解明並びに治療法の開発だけでなく,精子ワクチンによる免疫学的避妊法の開発という点からも重要な研究課題である.しかし,精子不動化抗体の対応抗原は非常に複雑で,精子固有の膜抗原の他に,精子表面に付着して存在する精漿抗原も関与しており,従来のconventionalな精子不動化抗体を用いて単一の精子,精漿抗原を分離精製する事は非常に困難であつた.著者らはこの目的の為には単一クローン性の精子不動化抗体の作製が必要であると考えて,細胞融合の手法を用い,精子不動化抗体産生hybridomaの確立に成功し,その性状分析を行つたので報告する. ヒト無精子症患者精液を,Fisher系ラットに免疫し,この免疫ラット脾細胞とマウス由来の骨髄腫細胞(P3U1)をポリエチレングリコールの存在下で細胞融合させ,HAT培地にて融合細胞のみを選別した.最初89wellに分注し19wellの培養上清に精子不動化抗体の産生を認めた.この内精子不動化値が最大(∞)を示すものを一つ選び,計算上113個の融合細胞を480wellに分注(cloning)した所114wellに細胞増殖を認め,その内10wellの培養上清に精子不動化抗体の産生を認めた.このようにして得られた細胞株の精子不動化抗体産生hybridomaの内,最も高い抗体価を示すclone1C4を選んでその性状分析を行つた. 1C4 hybridomaの染色体分析ではマウス染色体の他,ラット染色体の存在を認め,また細胞質内にはラットIgの存在を認めた.培養上清中にも多量のラットIgが産生されており,これはヒト精子に対して補体依存性の強い精子不動化作用を示した.抗体特異性は精奨並びに人乳抗原と反応する精奨人乳共通抗原に対するものであつたが,lactoferrinに対するものではなく,著者らが新たに見出した精奨No.7抗原に対するものであることが判明した.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-10-01

精漿抗原に対する単一クローン性精子不動化抗体産生hybridomaの作製とその性状分析

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