受精後着床迄に出現する妊婦血中Early Pregnancy Factorについて

概要

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hCGの徴量測定により受精卵の着床早期診断は可能であるが,いまだ受精後着床までの段階での受精診断は不可能で,不妊原因としての受精障害と着床障害の鑑別は極めて困難である.1974年Mortonetal.によって報告された妊娠初期に出現するTリソパ球ロゼット形成能抑制因子(EPF)を受精から着床に至る受精卵分割段階で測定する事により両者の鑑別が可能か否かを検索する目的で,先ずEPF測定最適条件の検討を行い,次いで着床前妊婦血中EPF濃度の測定を行った.EPF測定は抗リンパ球血清(ALS)のリンパ球ロゼット形成抑制作用がEPFの存在下にどの程度増強されるかで判定した.先ず1mlの健常男子末梢リンパ球浮遊液(1×10^7/ml)を遠心後,非働化被検血清0.25mlを加えて浮遊液とし,37℃30分間反応させた後Hanks液を加えて1.0mlとした.次に倍数希釈したALS0.25mlと補体(モルモット血清)0.05ml及び被検血清処理リソパ球浮遊液0.1mlを混合し37℃,90分間反応させた後手赤血球0.1ml(2×109/ml)を施え100×gで5分間遠心後直ちにロゼット形成率を測定した.ALSを含まぬ対照のロゼット形成率(C)に対する各ALS希釈段階における形成率(T)の比(T/C)が0.75以下になるALSの最大希釈倍数をもってロゼット形成阻止を表現しRosetteinhibitiontiter(RIT)とした.基礎体温よりみて排卵後7日までの正常月経周期を有する避妊婦人のRITは2〜4×103であったのに比べ,後になって妊娠と診断された婦人のRITは16〜32×103と前老に比しロゼット形成抑制作用が4〜8齢こ増強していた.また人工受精(AIH)によって妊娠に成功しなかった10名の不妊婦人のAm後4〜6日目の血中RIT値は,すべて2〜4×103の範囲であった.以上の実験結果は血中EPFの測定により受精の早期診断が可能である事を示しており,今後,不妊検査として受精障害と着床障害の鑑別に利用出来るものと思われる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1984-03-01

受精後着床迄に出現する妊婦血中Early Pregnancy Factorについて

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