キクの花色に関する研究 (第2報) : 生花弁の吸収スペクトルについて
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概要
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(1) キクの花色を分析するための物理的手段として, 生花弁の可視部における吸収スペクトル•カーブの測定を68品種について行なつた. アントシアン色素による吸収極大は530〜560nm, カロチノイド色素によるそれは420〜490nm, そしてフラボノール類によるそれは350〜370nmであつた.(2) 吸収スペクトル•カーブの型と花色との間には密接な関係が認められ, スペクトルの型から花色は次の4グループに分けられる. すなわち, グループ(1): スペクトル•カーブの350〜370nmに主としてフラボノール類による吸収極大のみがみられる. このグループの花色は白色で, 供試品種中, 8品種がこれに属する. このフラボノール類による吸収極大は下記のグループにも共通している. グループ(2): 540〜560nmにアントシアン色素による顕著な吸収極大が観察されるグループで, 花色は桃色〜赤紫色である. このグループには26品種が属する. グループ(3): 主要吸収極大として420〜490nmに2〜3個のピークを持つカロチノイド色素による吸収スペクトルのみられるグループで, 黄色花の14品種がこのグループに属する. グループ(4): 上記3グループにみられるスペクトルタイプが共存したタイプで, 450nm付近にカロチノイド色素による2〜3個の吸収極大, 550nm付近にアントシアン色素による吸収極大とが認められ, 橙色〜赤色花種の20品種がこのグループに属する.(3) グループ(2)の桃色〜赤紫色花の吸収スペクトル•カーブでは, アントシアン色素による吸光度が増大するにつれ, 花色は濃くなる. グループ(3)の黄色花でもカロチノイド色素による吸光度の増大にともない, 黄色が顕著となる. グルー•プ(4)の燈色〜赤色花の吸収スペクトルでは, カロチノイド色素およびアントシアン色素による吸光度の相対的割合の変化にともない, 花色は橙色〜赤色の範囲で変化する.(4) 生花弁の吸収スペクトル•カーブの測定結果によれば, カロチノイド色素の吸収極大値はどの品種についてもほぼ同じ値を示しているが, アントシアン色素の吸収極大値は花色によつて異なり, 赤色花の場合には短波長側 (Ca. 540nm) にみられるが, 桃色花の場合には長波長側 (Ca. 560nm) にみられ, 赤紫色花では中間的な波長域 (Ca. 550nm) にみられる. すなわち, 吸収極大における吸光度が小さくなるにつれ, その吸収極大値は長波長側に移行する. また, それぞれに350〜370nm付近に強い吸収帯がみられる点などから, これにはフラボノール類によるコピグメンテーションが関与しているものと思われる.したがつて, 生花弁の吸収スペクトル•カーブの測定研究は多種多様にわたるキクの品種の花色の解明に有効な手段である.
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