ギ酸-過酸化水素を用いる均一溶液からの鉄の沈殿
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概要
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鉄(III)およびギ酸アンモニウムを含む溶液をpH3に調節後,ギ酸,過酸化水素水を加えて加熱することにより鉄(III)を均一沈殿させることができる.pH3付近で鉄は定量的に沈殿する.得られた沈殿はち密でロ過,洗浄が容易であるが,X線回折図は示さない.硫酸イオンの共存は沈殿の見かけの性状を著しくよくする.尿素を用いる均一沈殿法では沈殿生成中に鉄(III)の一部が還元される欠点があるが本法ではこのような還元は起らない.また,ガラス容器壁への沈殿の固着もほとんど認められない.硫酸イオン,塩素イオンニッケルイオン,銅イオン,マンガンイオンの共沈殿を調べた結果,いずれも次式の関係が成立することがわかった.<BR><I>X</I>=<I>K</I>・<I>C<SUP>1/n</SUP></I><BR>ここに<I>C</I>は目的イオンの溶液中の濃度,<I>X</I>はその共沈殿量(mol/1g Fe)を示す.<I>K</I>, <I>n</I>は実験条件によってきまる定数.<BR>カチオンの共沈殿量はpH上昇とともに増し,また,pH一定の場合は塊化アンモニウムの共存量の増加に伴って減少する.カチオンの共沈殿率<I>y</I>と溶液中の水素イオン濃度[H<SUB>3</SUB>O<SUP>+</SUP>]または塩化アンモニウムの共存量[NH<SUB>4</SUB>Cl]との間には次式の関係が成立する.<BR><I>K</I><SUB>1</SUB>=<I>y</I>/1-<I>y</I>[H<SUB>3</SUB>O]<SUP>α</SUP>,<I>K</I><SUB>2</SUB>=<I>y</I>/1-<I>y</I>[NH<SUB>4</SUB>Cl]<SUP>β</SUP><BR>ここに<I>K</I><SUB>1</SUB>, <I>K</I><SUB>2</SUB>, α, βは定数.<BR>アニオンはpH 3.1〜3.2で最大共沈量を示す.
著者
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林 謙次郎
北海道大学理学部化学科
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太秦 康光
北海道大学理学部化学教室
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斉藤 節
北海道大学理学部化学教室
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栄花 正吉
北海道大学理学部化学教室
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林 謙次郎
北海道大学理学部
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太秦 康光
北海道大学理学部
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