白血球減少症および巨大脾腫を伴つたバセドウ病の1例プロピルサイオウラシル誘発性のループス様症候群および自己免疫性好中球減少症の文献的考察
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概要
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症例は38才,男性で6年前よりバセドウ病にてプロピルサイオウラシル(PTU)を服用中,左側腹部痛,発熱,関節痛出現し,当科入院.肋骨弓下8cmに及ぶ巨大な脾腫と白血球減少症2000/mm3(うち好中球730/mm3)を認め, CRP 5 (+)血沈1時間値63mm, RA (±),抗核抗体(ANF) (+)抗2本鎖DNA抗体(一),抗白血球抗体(+)であつた.甲状職機能はT3294ng/d1, T418.3μg/dlと高くTBIIも70%と高値であつた.本症での好中球減少症の機序を調べるため, Boxer法により測定した自己好中球に対するopsonizing antibodyはIgG分画中に認められ,正常人の約4.5倍と強陽性を示し,この活性は臨床症状の改善と共に低下していつた.なお,本症例では薬物誘発性の自己免疫疾患の病態が考えられ,この患者のリンパ球とPTUをinvitroで加えリンパ球の幼若化反応を検討した結果PTU0.1μg/ml lμeg/mlの濃度に対し有意な3H-thymidine uptakeの増加が認められた.その他ヒト顆粒球とのみ特異的に反応する抗核抗体(GS-ANF)も認められた.以上の結果から,本症は薬物誘発性のループス様症候群,その中でも自己免疫性の好中球減少症が考えられたため, PTUを中止しさらに甲状腺亜全摘術を施行した.その後の経過は極めて良好で脾腫も全く消失し,白血球数および免疫学的検査もすべて正常化した.抗甲状腺薬によるループス様症候群は現在まで15例の報告例があり.その病態に自己免疫学的機序が示唆される点で本症は興味深い1例と考える.
著者
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井上 哲文
東京大学医学部物療内科
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宮川 めぐみ
東京女子医科大学 内科
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佐藤 幹二
東京女子医科大学 内分泌センター内科
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対馬 敏夫
東京女子医科大学 第2内科
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佐藤 幹二
東京女子医科大学内科
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鎮目 和夫
東京女子医科大学
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佐藤 雄二
東京女子医科大学内科
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