妊娠および分娩時の母体血中ACTH,Immunoreactive-β-endorphinおよびCortisolの変動
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概要
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母体血中ACTH,Immunoreactive(IR)-β-endorphinおよびcortisolを測定し,妊娠,分娩時のこれらホルモンの分泌動態を検討した.さらに血漿の一部をSephadex G-50 columeにてゲル濾過を行ない,これらホルモンの血中での存在様式についても検討した.妊娠時の血漿ACTH,IR-β-endorphinは妊娠の経過につれて徐々に上昇したが正常範囲内の変動に止った.一方cortisolは妊娠8週にて既に正常上界に達しており妊娠の経過につれて徐々に上昇した.妊娠時のACTHとIR-β-endorphinおよびACTHとcortisolの相関は各々r=0.79,p<0.001;r=0.54,p<0.0001;と極めて良好であった.分娩時のACTHは分娩I,II,III期と徐々に上昇し,III期は分娩前の20〜30倍の高値を示し,分娩2時間後(以下IV期)には急速に下降した.IR-β-endorphinはACTHとparallelに変動し,ACTHとIR-β-endorphinの相関はr=0.89,p<0.0001と非常に良好であった.一方cortisolは分娩I,II,III期と上昇するものの,上昇率は約2倍であり,分娩IV期でも分娩II,III期に相当する高値を示しACTHとcortisolの相関はr=0.24と不良であった.これらのことから妊娠時も分麹時もACTHとIR-β-endorphinはconcomitantに恐らくは母体下垂体より分泌されているものと考えられた.さらに妊娠時のcortisol値はCBGにより修飾されている為,ACTHとcortisolの分娩時のdiscrepancyは両ホルモンの代謝速度の差によるものと考えられた.次に,Sephadex G-50によるゲル濾過バターンでは,ACTHの大部分の免疫活性はnative ACTHの部位に認められ分娩の進行とともにこのpeakの増大をみた.一方IR-β-endorphinはβ-lipotropin(LPH)とβ-endorphinの部位に2つのpeakを認め,分娩の進行とともにこの2つのpeakの増大をみた.この際,分娩のいずれの時期においてもβ-LPHとβ-endorphinのratioの差がみられたかったことから末梢および下垂体でのβ-LPHからβ-endorphinへのconversionはおこってないと考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-07-01
著者
-
小田桐 恵美
東京女子医科大学中央検査部
-
安達 知子
東京女子医科大学産婦人科
-
安達 知子
総合母子保健センター愛育病院産婦人科
-
地曳 和子
東京女子医科大学中央検査部
-
大内 広子
東京女子医大
-
出村 博
東京女子医科大学病院第二内科
-
出村 黎子
東京女子医科大学ラジオアイソトープ科
-
鎮目 和夫
鎮目記念クリニック院
-
代田 真理子
東京女子医科大学ラジオアッセイ科,内科II
-
篠崎 初恵
東京女子医科大学ラジオアッセイ科,内科II
-
鎮目 和夫
東京女子医科大学ラジオアッセイ科,内科II
-
小田桐 恵美
東京女子医科大学臨床検査科
-
小田桐 恵美
東京女子医科大学内分泌内科
-
小田桐 恵美
東京女子医科大学
-
出村 黎子
東京女子医科大学第二内科学
-
出村 黎子
東京女子医科大学
-
鎮目 和夫
東京女子医科大第2内科
-
小田切 恵美
東京女子医科大学中央検査部
-
代田 真理子
東京女子医科大学ラジオアツセイ科 内科ii
-
出村 博
東京女子医科大学第二内科
-
出村 博
東京女子医大病院
-
出村 博
東京女子医科大学第2内科
-
出村 博
東京女子医大内分泌内科
-
Odagiri E
Tokyo Women's Medical Univ. School Of Medicine Tokyo Jpn
-
篠崎 初恵
東京女子医科大学ラジオアツセイ科 内科ii
-
安達 知子
東京女子医大
-
出村 博
東京女子医科大学内分泌疾患総合医療センター内科
-
Jibiki Kazuko
Institute Of Clinical Endocrinology And Second Department Of Medicine Tokyo Women's Medical Col
-
出村 黎子
東京女子医大・内科
-
鎮目 和夫
東京女子医科大学
-
地曳 和子
東京女子医科大学ラジオアッセイ科
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