Helper T-細胞機能低下を示したCommon Variable Immunodeficiencyの1例
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概要
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症例は20歳女性で小児期に易感染性も薬剤の投与もなかった.最近,発熱・反復する呼吸器系感染・貧血を主徴として来院し検査所見にて低γ-グロブリン血症(0.08g/dl),血清中のすべてのクラスの免疫グロブリン量(lgG 182mg/dl, IgA 0.7mg/dl以下, IgM 5.0mg/dl, IgD 2.0mg/dl以下, IgE 0.2u/ml)が低値を示し,白血球数3,600/cumm, Ly 35%, T-Cell: 85%, B-Cell: 12%, OKT3+: 73.1%, OKT4+: 26.6%, OKT8+: 40.3%, OKT 4/8比: 0.66であり成人にて発症したcommon variable immunodeficiency (CVI)と診断した.患者の末梢血リンパ球(1×106/ml)をPokeweed Mitogen (PWM, 10μl/ml)で刺激し, 6日間培養後の上清中に産生されたIgG量をEnzyme-linked immunosorbent assayにて測定したところ42ng/mlと対照の690, 452ng/mlに比して低値を示した.患者B-細胞と健常人T-細胞を1:4に調整しPWM刺激混合培養したところ, IgG産生は増強された.同様に,健常人B-細胞と患者T-細胞の組み合わせで培養したが健常人T-細胞に比して患者T-細胞は有意な促進効果を示さなかった.また,患者T-細胞は健常人PBMあるいはT-, B-細胞混合培養に第三の細胞群として加えてもIgG産生に抑制を示さなかった.これらの実験結果より患者T-細胞のhelper機能の低下によりIgG産生の低下がもたらされたと推測された.また,本症例に合併した鉄欠乏性貧血とリンパ系組織が腸管からの鉄吸収の役割を有することを考え合わすと患者に認められたhelper T-細胞機能低下が貧血の一因として推測される.
著者
-
山村 昌弘
岡山大学医学部第三内科
-
天野 哲基
岡山大学医学部第3内科
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西谷 皓次
岡山大学医学部第三内科
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鈴木 信也
岡山大学医学部第3内科
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太田 善介
岡山大学医学部平木内科
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篠原 佳年
岡山大学医学部第3内科
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波多野 誠
岡山大学医学部第三内科
-
篠原 佳年
岡山大学医学部第三内科
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