牛枝肉形状に対する品種の影響と成長に伴う形状の変化
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概要
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牛枝肉の形状による量的評価の可能性を検討するための前段的分析として,枝肉形状の変動に及ぼす品種の影響と成長過程での枝肉形状の変化とについて検討した.分析には黒毛和種島根系統35頭,兵庫系統31頭,ホルスタイン種16頭,日本短角種20頭および黒毛和種とホルスタイン種の交雑F1雌牛を黒毛和種に戻し交配した交雑種20頭,合計122頭の去勢牛の枝肉を供した.これらの枝肉は概ね濃厚飼料飽食給与により肥育した去勢牛を,品種ごとの成熟特性を考慮して,生体重約350kgから上限570kg-740kgの範囲でほぼ等間隔で屠殺して得た.枝肉測定値として半丸重量のほか,枝肉の長さに関する11部位,周囲長,厚みおよび幅に関する各4部位の値を用いた.枝肉の全長に対する一次偏回帰(全体•品種内)を考慮した各枝肉測定値の最小自乗平均値には,22部位のうち17部位で品種間に差が認められた.枝肉形状の全体像を把握するため,全品種込みの枝肉測定値間の相関行列に主成分分析を施したところ,第1主成分として枝肉の大きさを表すサイズ因子,第2主成分として枝肉の薄さに関する因子,第3主成分として枝肉の幅に関する因子,第4主成分として枝肉前部の大きさと,腿と腰回りの厚みと四肢の長さとの釣合を示す因子が取り出された.測定値の全変動の約80%が,この4主成分に集約された.各主成分スコアには品種間差がみられ,サイズについては供試牛の屠殺体重分布の違いを反映してホルスタイン種と黒毛毛和種の島根系統が他の品種より大きく,枝肉の薄さの成分ではホルスタイン種が大きく,黒毛和種の兵庫系統では他の品種より小さかった.幅の成分では,黒毛和種の島根系統は兵庫系統より大きく,ホルスタイン種は他の全ての品種より小さかった.枝肉の釣合を示す成分では,日本短角種が黒毛和種の島根系統以外の全品種より大きい値を示し,前勝ちの形状を示すのに対し,黒毛和種-兵庫系統および交雑種は島根系統よりも,前勝ち度が小さかった,枝肉全長に対する各測定値の相対成長係数には,22部位のうちの7部位で品種間差が認められ,特に交雑種で他の品種と異なる部位が多かった.また全品種とも共通して成長と共に枝肉は概ね四肢が長く,厚みのない形から,とくに胴体の厚みが充実する方向へ変化した.枝肉重量に対する各枝肉測定値の相対成長は,23部位のうち15部位で品種間に差がみられた.そのほとんどで日本短角種と交雑種が,残りの3品種•系統よりも小さい相対成長係数を示し,これらの2品種が枝肉形状に関する成長でも他の品種より早熟であることを示していた.
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