黒毛和種における県間での種雄牛の動きおよび各府県集団の遺伝的寄与からみた繁殖構造

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黒毛和種における県間での種雄牛の動き,および当該品種に対する各府県集団の遺伝的寄与からみた繁殖構造について分析した.材料としては,1960年度および1980年度に登録された黒毛和種登録雌牛から得られた無作為抽出標本を用いた.遺伝的寄与率はWIENERの方法に従い,有効な種雄牛生産県数はROBERTSONの方法に従って計算した.得られた結果の概要はつぎのとおりである.1. 1960年度に登録された雌牛は,中国および九州地方の生産牛が大半を占めた.また,種雄牛供給県としては,鳥取県および兵庫県が重要な役割を果たしていた.一方,1980年度に登録された雌牛の産地は,北海道および東北地方に拡大する傾向を示した.種雄牛供給県としては,兵庫県や鳥取県に加えて岡山県と広島県が重要な役割を果たしていた.2. 1960年において10%以上の遺伝的寄与率を示した県は,鳥取県,兵庫県,岡山県,広島県,および島根県であった.また,兵庫県と鳥取県の総合寄与率は56.2%であった,1980年において10%以上の遺伝的寄与率を示した県は,鳥取県,兵庫県,岡山県,広島県,島根県,鹿児島県,および宮崎県であった.また,兵庫県と鳥取県の総合寄与は67.1%であった.3. 父親世代の有効な種雄牛生産県数は1980年において5.22であり,1960年におけるそれよりも大ぎな値を示した.一方,祖父世代以降の有効種雄牛生産県数は,1960年のほうが1980年のそれよりも大きな値を示した.以上の結果より,黒毛和種においては少数の県集団を頂点に持つ機能的階層構造が存在することが明らかとなった.
社団法人日本畜産学会の論文

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