中世日本の馬について
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概要
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鎌倉市材木座遺跡の中世日本馬の骨を観察, 計測した結果, 次の所見を得た。<BR>1. この骨は1333年 (元弘3年), 新田義貞鎌倉攻めの際の新田勢および幕府方の軍馬のものを主体とし, その前後の鎌倉・室町時代の馬の骨を含むと考えられる。これらの馬は関東産馬を主体とし, 甲斐, 信濃等の産馬をも含むと考えられる。<BR>2. 四肢骨から馬の体高を推定すると, 109〜140cm, 平均129.477±1.098cmとなり, 主体は先史時代の中形馬であるが. また先史時代の小形馬も存し, なお両者の交雑による馬も含まれていると考える。これらの馬は軍馬が主体であるから, 当時の比較的大格馬が選択されているものであろうが, 同じ時代により多くの小格馬も存したと考えられる。これら鎌倉時代の馬も, 漸次文化の進展にともない, また軍馬としての必要上, 小形馬は淘汰せられ, 日本内地においては, わずかに在来馬として現在の木曽馬のように体高124〜143cm平均133cmを有するものが残されたのであろう。<BR>3. 中手骨・中足骨の長幅指数, 尺骨, 第2・第4中手足骨の退化度において, 今回観察した鎌倉馬は, 日本先史時代馬, 現存日本在来馬に類似し, 蒙古馬とは異なる点が多々ある。漢代すでに中央アジアから, 西域馬としてアラブ系統馬が中国に入り, 蒙古馬との交雑も行なわれているから, 大陸からの導入と見なければならぬ日本在来馬の祖源をなした系統は, アラブ系統馬の影響を多分に受けたものであると考えざるを得ない。
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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