天山山脈北麓コヨンド谷(キルギス共和国サリチャット・エルタシュ自然保護区)の高山草原における植生概況
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概要
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野生動物生態調査の一環として,天山山脈北麓コヨンド谷(キルギス共和国サリチャット・エルタシュ自然保護区)において,高山草原の植生調査を行った。併せて,植物資源の利用について住民への聞き取りを行なった。この地域では,ウマとヒツジの放牧が行なわれ,マルコポーロシープ(アルガリ)やオオカミ等の野生動物も生息しているが,野生生物,気象,生活の情報はほとんどない状況である。ベースキャンプ(標高3,400m)周辺に帯状区をとり,約100mおきに右岸・左岸5地点ずつのプロット(2m×2m)を設けた。現地踏査による植物群落調査を2010年10月に行なった。その結果,5科12種の草本植物が確認され,低温や乾燥に適応した形態的特徴を有していた。植被率は 0~50%で,斜面方位によって植物群落の分布は異なり,右岸(北東斜面)では,川からの距離に伴って植被率が減少したが,左岸(南西斜面)ではその関係は認められなかった。現地では燃料として乾燥した家畜の糞が使われ,乾燥地における限られた植物資源をうまく利用した生活が観察された。 As a part of an ecological research project on wild animals in the Sarychat-Ertash State Reserve, we surveyed alpine steppe vegetation in the Koyondu valley in the northern Tian Shan mountains of the Kyrgyz Republic. In addition, we interviewed the inhabitants about the utilization of plant resources. Horses and sheep are kept as livestock in the area and Marco-Polo sheep (argali)and wolves are known to inhabit the region, but the information of wildlife, weather conditions and inhabitants’livelihood in this region is hard to obtain.In October 2010, we established a transverse transect across a river near our base camp at an elevation of 3,400m, with five plots (2m ×2m per plot)on each bank.The 12 herbaceous species identified belonged to five families and all exhibited morphological adaptations to low temperatures and humidities. Percentage cover among plots ranged from 0 to 50%, with the distribution of plants varying as a function of the slope aspect. On the right bank, percentage cover was observed to decrease with distance from the river on the north-eastern slope, but this relationship was not observed on the south -western slope. Inhabitants of this arid area used the limited plant resources sustainably, and dried droppings from their livestock as fuel.
- 2011-03-25
著者
-
泉山 茂之
野生動物保護管理事務所
-
渡辺 悌二
北海道大
-
渡辺 悌ニ
北海道大学大学院地球環境科学研究科
-
渡辺 悌二
北大 大学院地球環境科学研究院
-
IZUMIYAMA Shigeyuki
Faculty of Agriculture, Shinshu University
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