長野県安曇野におけるオオルリシジミ成虫のマーキング調査について
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概要
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The number of Shijimiaeoides divinus barine adults and their migration behavior were investigated by a mark-and-recapture method in the preservation area of Azumino. Pupae (n=400 each time) of this butterfly had been released on this area in 2008 and 2009. Sampling for marking was carried out 10 times during May and June in 2008 and 7 times in 2009. Male and female butterflies appeared in late May and early in June, respectively. In 2008, 211 butterflies were marked and 57(27.0%) recaptured. In 2009, 137 butterflies were marked and 24(17.5%) recaptured. There were no significant difference in the percentages of those recapture by sex or year. The Percentage of marked butterflies among those captured was 44% in 2008 and 50% in 2009. Females marked at an early stage of their development were recaptured more frequently than those in a late stage. The maximum duration from first capture to last recapture was 17days in 2008 and 15 in 2009. Butterflies recaptured outside the preservation area were 1 female in 2008 and 2 females in 2009. One of these was observed sucking nectar and laying eggs in an area 560m away from the release point. Therefore, it is suggested that Sophora flavescens be planted at 500-600m intervals to recover the population of S. divinus barine. Estimated total number of butterflies in the preservation area was 110.0 ~ 273.6 in 2008 and 95.3 ~ 289.3 in 2009. The total number of butterflies estimated to have emerged in the population was 284 in 2008 and 184 in 2009. These values were underestimated because the number of adults that emerged before the mark-and-recapture census could not be estimated. 長野県安曇野において, オオルリシジミ成虫の個体数や移動・分散の実態を明らかにするため,標識再捕獲法による調査を行った. 保護区に人為的に放されたそれぞれ 400 個体の踊から羽化した成虫を対象に, 2008 年 5 月~ 6 月にほぼ 3 日間隔で計 10 回, 2009 年はほぼ 5 日間隔で計 7 回のマーキングを行った. その結果, 成虫の出現時期は, いずれの年もオスは 5 月下旬, メスは 6 月初旬がピークとなり, メスはオスよりも 5~6 日遅かった.2008 年には 211 個体をマークし, 再捕獲された個体は 57 個体 (27.0%), 2009 年は 137 個体のうち 24 個体 (17.5%) となり, 再捕獲率は年次や雌雄間で有意な差はなかった. 捕獲個体の中に占めるマーク虫の割合は, 2008 年は最大で 44%, 2009 年は 50% であった. 両年とも発生初期にマークされたメス個体は, 再捕獲される割合が高く, また再捕までの平均期間が長かった. マークされてから最後に再捕獲されるまでの期間が最も長かったのは, 2008 年ではオス, メスともに 17 日, 2009 年ではオスが 14 日, メスが 15 日であった. 保護区以外で確認されたマーク個体は, 2008 年にメス 1 個体 2009 年にメス 2 偶体で, 直線距離で 560m 離れた地区で吸蜜・産卵しているのが確認された. これよりオオルリシジミ個体群を安曇野で回復させるには, 生息地から 500~600m おきにクララ群落が分布するような生息環境を整備する必要があると考えられた. ]olly-Seber 法により推定した保護区内の僧体数の範囲は 2008 年で 110.0 ~ 273.6 個体, 2009 年で 95.3 ~ 289.3 団体であった. また補正加入数 Bi’ を合計した総加入数は 2008 年で 284 個体 2009 年で 184 個体であった. これは放した踊数と羽化率より算出した羽化数 ( 352 個体) よりも少なくマーキング調査以前に羽化した個体数を加算できなかったために過小評価になった.
著者
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中村 寛志
Education And Research Center Of Alpine Field Science Faculty Of Agriculture Shinshu University
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江田 慧子
Education And Research Center Of Alpine Field Science Faculty Of Agriculture Shinshu University
-
Nakamura Hiroshi
Shinshu Univ. Nagano
-
江田 慧子
信州大学農学部アルプス圏フィールド科学教育研究センター
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