南アルプスにおける地上性甲虫(オサムシ科,クビボソゴミムシ科)の群集構造と標高のニッチ幅
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
南アルプスにおける地上性甲虫類の群集構造と標高に対するニッチ幅をあきらかにするため,2001年6月から9月にかけて調査を行った.仙丈ヶ岳周辺の標高1000mから2600mの範囲に,11の調査地点を設けた.乳酸飲料と70%エチルアルコールを入れたトラップによる採集は,2001年6月には標高1000mから1400mの7調査地点で3回,7月から9月には標高1000mから2600mの範囲で2回行われた.本調査で合計37種2337個体のオサムシ料とクビボソゴミムシ料の地上性昆虫が採集された.6月の調査での優占種は,マルガタナガゴミムシPterostichus subovatus(全体の44.9%)とクロナガオサムシLeptocarabus procerulus(全体の38.6%)であった.8月と9月の調査での優占種は,サンプククロナガオサムシLeptocarabus arboreus horioi,キンイロオオゴミムシTrigonognatha aurescens,ハネアカナガゴミムシPterostichus brunneipennis akaishicusおよびクロツヤヒラタゴミムシSynuchus cycloderusで,これら4種で1649個体,全体の76.3%を占めていた.8月と9月の調査結果をもとに標高に対するニッチ幅が計算され,クロツヤヒラタゴミムシ,ハネアカナガゴミムシ,サンプククロナガオサムシ,ホソヒラタゴミムシPristosia aeneolaおよびコクロツヤヒラタゴミムシSynuchus melanthoが高い値を示した.特にクロツヤヒラタゴミムシは,標高1000mから2400mまでの広い垂直分布を示した.捕獲個体数の多い種は,広いニッテ幅を持っていた.ただし,個体数の少ない種では,ニッチ幅と捕獲数の相関はみられなかった.ニッチ幅と分布域の平均標高との間には,弱い正の相関が見られた.これらの結果から,山岳環境を代表する指標種について考察した.
- 日本環境動物昆虫学会の論文
- 2006-12-15
著者
-
中村 寛志
信州大学農学部AFC昆虫生態学研究室
-
Suttiprapan Piyawan
信州大学農学部
-
山本 晶子
信州大学農学部
-
Suttiprapan Piyawan
Shinshu Univ. Nagano Jpn
-
Nakamura Hiroshi
Shinshu Univ. Nagano
関連論文
- 信州大学農学部附属AFC西駒ステーション演習林におけるシデムシ相
- 国営アルプスあづみの公園保護区におけるオオルリシジミ Shijimiaeoides divinus barine 蛹導入個体群に関する生命表調査
- 長野県の萱野高原と大芝高原におけるチョウ類群集の季節変動と環境評価
- 南アルプス北岳と仙丈ヶ岳周辺のチョウ類群集の定量的調査
- 信州大学農学部附属AFC西駒ステーション桂小場試験地周辺における昆虫相(1)コウチュウ目(Coleoptera)・カメムシ目(Hemiptera)
- オオルリシジミ蛹の飼育温度と羽化日,成虫の蔵卵数・前翅長との関係および羽化に要する蛹期の有効積算温度について
- 長野県安曇野におけるオオルリシジミ成虫のマーキング調査について
- 長野県安曇野における野焼きがメアカタマゴバチによるオオルリシジミ卵への寄生に及ぼす影響について
- 第1回AFC国際シンポジウム報告と講演要旨
- 長野県安曇野における卵寄生蜂メアカタマゴバチによるオオルリシジミ卵への寄生について
- J225 長野県安曇野におけるオオルリシジミの卵寄生蜂について
- B226 インゲンテントウの生態と防除に関する研究 : 11. 長野県における分布地域の拡大とその様相(生活史 分布)
- リンゴ・ナシのナミハダニTetranychus urticae(Acari:Tetranychidae)に対する粘着くん水和剤の防除効果について
- D308 インゲンテントウの生態と防除に関する研究 : 10.長野県における本種の発生消長(生態学)
- チョウ類を指標種とした環境評価手法と環境アセスメント
- 学生支援GPにおける2008年度フィールド体験実習に関する報告
- 南アルプス北岳と仙丈ヶ岳のチョウ類群集 (特集 山岳域の昆虫たち)
- 3種類の採集方法による信州大学農学部構内のオサムシ科甲虫の種構成と季節変動
- 北アルプスの高山から里山にかけてのチョウ類群集とモニタリングのあり方
- 南アルプスにおける地上性甲虫(オサムシ科,クビボソゴミムシ科)の群集構造と標高のニッチ幅
- 信州大学農学部附属AFC演習林におけるショウジョウバエ群集の成層構造
- カメムシ類の発生量と斑点米被害の関係および畦畔の草刈りがカメムシ類の発生に及ぼす影響について
- 長野県上高地地区におけるチョウ類群集を用いた治水工法の評価の試み
- 異なった耕作法が行われた圃場環境のゴミムシ群集による評価
- 住民の参加によるチョウ群集のモニタリング
- 信州大学農学部附属AFC西駒ステーション演習林のショウジョウバエ相について
- 除去法を用いた地表徘徊性ゴミムシ類成虫の個体数推定
- プラスチック・コンテナを用いたカワネズミ Chimarrogale platycephala (Temminck) の生息調査法
- AFC構内農場のリンゴ園におけるハダニとその天敵類の発生消長ならびに空間分布について
- チョウ類の多様性調査・解析法--グループ別RI指数法 (特集・昆虫類の多様性調査法)
- 「昆虫科学連合」設立総会と記念シンポジウムに出席して
- 伊那市ますみヶ丘におけるヒメシジミ成虫の発生消長と畦畔管理について
- 信州大学農学部構内における絶滅危惧種ミヤマシジミの個体群回復実験
- チョウ類群集の研究について
- 在来コマツナギと中国産コマツナギで飼育されたミヤマシジミの生存と発育の比較
- Estimating the adult population size of ground beetles (Carabidae) using the removal method
- 絶滅危惧種ミヤマシジミの飼育方法について
- 長野県安曇野におけるオオルリシジミの保全活動 (特集 シジミチョウの保全)
- 大学キャンパスの昆虫相(9)信州大学南箕輪キャンパス
- 希少種ミヤマシジミの帰化植物シロバナシナガワハギ(マメ科シナガワハギ属)への産卵に伴う生存率の低下
- チョウ類の群集生態学的研究の方向性 : 序にかえて