自閉症児における社会的スキルの指導法の検討(1) - 言語プロンプトおよび文字プロンプト手続きを導入して -
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概要
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文部科学省中央教育審議会は平成20(2008)午1月「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善について」(答申)をとりまとめた。また,文部科学省は平成20(2008)年12月特別支援学校学習指導要領案を公示した。この答申や指導要領案において,従来の自立活動の内容5区分(健康の保持、心理的な安定、環境の把握、身体の動き、コミュニケーション)22項目に、新たに区分「人間関係の形成」を追加している。また、「・・・自閉症、LD (学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)等も含む多様な障害に応じた適切な指導を一層充実させるため、他者とのかかわり、他者の意図や感情の理解、自己理解と行動の調整、集団-の参加、感覚や認知の特性-の対応」するとしている。以上のような特別支援教育の今後の方向から、自立活動において自閉症者などへの適切な指導を進めると同時に「人間関係の形成」という新たな区分の内容と指導方法を開発することは、特別支援教育の大きな目下の研究および実践課題である。 自閉症者をはじめ発達障害者の社会的スキルあるいは社会性が現在および将来の地域生活を支える重要な要素であることが繰り返し指摘されている(Ganz,Cook,& Earles-Vollrath,2006)。このような社会的認識を背景として,様々な社会的スキル指導のプログラムが知られている(Ben-Arieh,2006 ; Ganz,Cook,& Earles-Vollrath,2006 ; 長崎・宮崎・佐竹・関戸・中村,2006)。また,最近特別支援学校(病弱・身体虚弱部門)の教員から「社会的スキルの指導を行っており,その効果が見られる」という話しを伺い,特別支援教育の現場でもその重要性必要性が認識され実践されていることを知った。 社会的スキルの指導法としては,ゲームや日常生活などの相互交渉や共同行為を含む活動をルーティンとして繰り返し(長崎・宮崎・佐竹・関戸・中秤,2006),その繰り返される活動の中で,いつ・誰に(弁別刺激),何を行う(行動)とうまく行く・うまく行かない(強化)という三項随伴性を対象者が形成することを支援する指導法が有効である(井揮,2006)。この応用行動分析の枠組において,近年社会的スキルおよび会話スキルの指導法として注目されるのは、Krantz & McClannahanらが開発したスクリプトおよびスクリプトフェイデイング手続きである(Argott,eta1.,2008 ; Brown,eta1.,2008 ; Krantz,&McClannahan,1993Krantz,&McClannahan,1998 ; MacDuff,eta1.,2007 ; McClannahan,& Krantz,2005 ; Sarokoff,eta1.,2001 ; Stevenson,eta1.,2000)。この指導手続きの特徴は,社会的スキルを使用する機会においてスクリプト(場合によっては写真も)の弁別刺激の下で社会的スキルの遂行を繰り返し強化する中で,次第にスクリプトをフェイドアウトし人工的な弁別刺激から本来の自然な弁別刺激-刺激制御を移行するところにある(Brown,2007)。この刺激制御の移行の原理自体は,プロンプトの解説書にも記載され,彼女らの独創ではないが,一定のフェイデイングの手続きを繰り返し継続して実施し,実証的な知見を得ているところは高い評価を得ている。本研究では,指導ⅠおよびⅢにおいて,スクリプト手続きの一部を試行的に試み,社会的スキル指導での有効性を検討する。 本研究の目的は、問題解決スキルとあったかメッセージに関する,活動ベースの集団活動(共同行為ルーティン)において言語プロンプトおよびスクリプトを使用した指導手続きの有効性を検討することである。
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